氷菓からアイスクリームへ、4000年のあくなき探求の物語

現代の冷凍技術なしに人々はどうやって冷たいスイーツを楽しんだのか

2020.08.02
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茶色のコートを着たウェイターが、「エスプーマ・エラーダ」をトレーで運ぶ。スペインの凍らせたムース菓子だ。スペイン、マドリードの装飾美術館所蔵、18世紀バレシンア地方のタイルより。(ORONOZ/ALBUM)
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 冷凍スイーツを楽しむためには現代の冷凍技術が不可欠に思えるが、実は冷たい菓子は何千年も前から存在している。中国からメソポタミアに至るまで、あらゆる古代文明の特権階級が楽しんできた。

 4000年前の中国にはすでに、凍ったシロップのようなものがあった。紀元前400年頃のペルシャ帝国では、サクランボやザクロ、バラ科の果実であるマルメロなどから作ったシロップを雪で冷やした「シャルバット」が人気だった。現代の「シャーベット」「ソルベ」「シロップ」という英単語は、この「シャルバット」から派生した。

18世紀のアイスクリームクーラー。イタリア・ナポリの国立陶器美術館所蔵。(BRIDGEMAN/ACI)
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 一説によると、紀元前330年にペルシャ帝国を征服したアレキサンダー大王は、風味付けした氷にハチミツをかけたものを好んでいたという。古代ギリシャ人や、その後の古代ローマ人も、飲み物を冷やすことをしていた。ローマ帝国初期の皇帝ネロは、晩餐において果汁にハチミツと雪を混ぜたものを楽しんでいた。(参考記事:「暴君ネロ 明かされる真実」

 さらに千年の時を経て、1290年代にはマルコポーロが中国から様々な味の氷のレシピを持ち帰った。中にはミルクを使うものもあった。

調達が難しい、貴重な氷

 現代のアイスクリームの元となるこうした冷たい菓子を作るには、凍った川や湖か寒冷な山間部などから雪や氷を調達し、それを保存する必要があった。集めた雪や氷は、解けないように藁や枝とともに詰めて都市部まで運んでいた。

 到着後、雪や氷は熱と光を避ける氷室で保管された。また、氷を断熱用の藁やおがくずとともに深く掘った穴に入れることで、熱から守った。

 中世になると、ヨーロッパ各地で雪を山から氷室に運ぶようになったが、氷の調達には多くの人出と手間がかかるため、非常に貴重な品だった。17世紀になると、個人所有の氷室が多く建てられるようになり、18世紀の終わりまでには町の中に大きな氷室が建設され、行商人たちが家から家へ氷の塊を売り歩くようになった。

次ページ:氷菓を作る「自然の魔法」

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