メキシコハダカアシナシイモリ(Dermophis mexicanus、写真は米ミズーリ州のセントルイス動物園で飼育されている個体)。アシナシイモリは地中にすむ両生類で約200種が知られている。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

 アシナシイモリは、歯の生えたミミズのような見た目の両生類だ。四肢がなく、滑らかで光沢のある皮膚をもち、それだけでもヘビを思わせるが、似ているのは外見だけではないかもしれない。彼らの一部は唾液に毒を含む可能性があることが、新たな研究で判明した。この発見に科学者たちは驚いている。本当だとすれば、「唾液に毒」は両生類では初めてのことなのだ。

 アシナシイモリは世界の熱帯に200種近くが生息している。カメルーンにいる体長9センチほどのIdiocranium russeliから、1.5メートル近くあるコロンビアのCaecilia thompsoniまで、大きさも様々だ。

 ほとんどは地中で暮らしているため、「アシナシイモリは脊椎動物の中で最も知られていないグループかもしれません」と、ブラジル、サンパウロにあるブタンタン研究所の進化生物学者カルロス・ジャレージ氏は言う。中には暗闇での生活に適応し、目が完全に退化した種もあるという。氏らの論文は7月3日付の学術誌「iScience」に発表された。

コンゴアシナシイモリ(Herpele squalostoma)。セジウィック郡立動物園で撮影。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

 アシナシイモリは、先のとがった歯が上顎に2列、下顎に1列の計3列あり、ミミズや節足動物などを捕食する。そのことはすでに知られていたが、ジャレージ氏は、ブラジル国内で捕獲されたアシナシイモリを観察していたとき、それまで一度も報告されたことのない分泌腺を歯の近くに発見した。唾液に加え、有毒な酵素を分泌しているかもしれない腺だ。ただし、この唾液が実際に毒性をもつかどうかを確かめるには、さらなる分析が必要だと同氏は注意を促す。

 もしこれが毒だとすれば画期的なことだと、オーストラリア、アデレード大学の進化生物学者エマ・シェラット氏は話す。なお、氏は本研究には関わっていない。

 一つは、攻撃に使う毒(触ると危険な防御用の毒と区別)が両生類と爬虫類で独立して進化したことになること。毒の進化に関する従来の説が書き換わる可能性がある。同時にもう一つ、カエルやサンショウウオの唾液にはなぜ毒がないのかという問題も浮上する。

 攻撃用の毒をもつ両生類として他に唯一知られているのは、グリーニングス・フロッグ(Corythomantis greeningi)というカエルで、やはりブラジルに生息し、顔にある毒腺と鋭い突起で相手を刺す。(参考記事:「毒をもつ動物たち、3つの「化学兵器」戦略」

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