筆者のアイシュワリャ・クマール氏(右端)が、2018年11月にインドのチェンナイを旅行中、両親のLK・クマールとブワナ・クマール、妹のプージャ・クマールと一緒に撮った自撮り写真。昔から、親戚一同がチェンナイの祖母宅に集まり、共に料理や食事をし、歌い、ヒンドゥー哲学について語り合う。(PHOTOGRAPH BY AISHWARYA KUMAR)
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 トランプ米大統領が、米国の移民受け入れを一時的に停止する計画をツイッターで発表したのは2020年4月、隔離が始まってから5週目のことだった。私、アイシュワリャ・クマールはインドからの合法移民で、米コネティカット州ハートフォードに住んでいる。

 このツイートは、私や現在米国で暮らす数百万の合法移民にとって、何を意味するのか? 私は、米ニューヨーク・タイムズ紙のウェブサイトを何度も更新した。最新の情報に飢えていた。

 情報は、断片的に入ってきた。「米国にいるビザ取得済みの人の排除に関しては、一言もない」と、ある記事は伝えていた。

 排除。

 巨大な石をのみ込んだような気がした。私は、自分が汚いと感じた。本当はここに属する人ではない、「よそ者」なのだと思った。翌日、当面の間、国外からのグリーンカード(永住権)の申請を制限する大統領令が出された。

 6月22日、別の大統領令により、今年中の在留外国人(H、L、Jのビザ保有者)の入国が一時停止され、移民の不安はさらに高まった。私の心には、疑問が渦巻いていた。すでに国内にいるビザ保有者は、どうなるのか? 国内からのビザ更新の申請は、どうなるのか? まさに傷口に塩を塗るようなものだと思った。

2018年のインドへの旅行中に、父のLK・クマールと母のブワナとカロム(インド発祥の卓上ゲーム)をするライターのアイシュワリャ氏。カロムが本当に上手な父が勝ち、笑顔を見せている。(PHOTOGRAPH BY AISHWARYA KUMAR)
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 私の家族は、1万3000キロ離れたインドのマドゥライに住んでいる。マドゥライは、無期限のロックダウン下にある。父は糖尿病で、心臓も患っている。マドゥライでは、2メートルの距離は、ほとんどの人が確保することのできない贅沢なものだ。現在、インドでは、確認されたCOVID-19の感染者数の合計は60万人を超え、1万7000人以上の死者が出ている。

 私は、あまり帰省をしない。よくて年に1度だ。しかし、いつもこう思っていた。いざとなれば、私が帰省することも、家族がこちらに来ることもできる。政府の政策とパンデミックにより、それが奪われることは堪え難い。

 インド、マドゥライの家族に電話すると、父はいつも明るい赤いバンダナを首に巻いている。人と接触する際に、鼻と口を覆う用意だという。家族はアパートに住んでおり、誰も外出を許されていない。ロックダウンの2週目、テラスに人がいないことに気づき、晩に散歩を始めた。汗が母の顔を滴り落ち、暑くなってきたと私に話す。南インドの夏のピークは、ちょうど今だ。

 私とパートナーは、遠く米国から、家族にとって今がどういう状況なのか、必死に理解しようとした。私がアマゾンやインスタカート(食料品や日用品の即日配達サービス)で食料品を注文するのに対し、家族は牛乳屋が新鮮な牛乳を家の外に毎朝配達し、八百屋が少なくとも1日に1度は新鮮な農産物を売りに来るのを待っている。父は特別な許可を得て、マスクと手袋をして、働く会社が主催するイベントに参加した。私は心配した。無症状のウイルス保有者からうつされたらどうするのか?

次ページ:移民にとって「家」とは

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