新型コロナ、第二波はどうすればうまく防げるのか

感染者が再び急増し始めた米国、その分析と対策とは

2020.06.30
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 コーエン・シルバー氏の研究では、たとえば銃乱射事件や2014年のエボラ危機のときのように、ネガティブな面に過度に焦点をあてたニュースが執拗に繰り返されると、多くの市民が精神的なショックを受け、心的外傷後ストレス障害が引き起こされる可能性すらあることが示されている。コーエン・シルバー氏のチームは5月、メディアや医療専門家は、パンデミックのリスクに関して、ヒステリーや混乱を増幅させることなく、実用的な助言を提供する役割を担うべきだとの警告を発している。

週3000万件の検査は必要か

 CDCによるCOVID−19検査キットに当初、欠陥があったことにより、米国では新たな感染者の発見が遅れ、いわば水なしで火事を消そうとするような事態となった。今年の春にロックフェラー財団から出されたある報告書は、検査の数を週100万件から週300万件へと2カ月で「劇的に拡大」するよう求めていた。米国の人口の約1パーセントを対象としたこの検査と「高精度」な接触追跡とを組み合わせることにより、経済活動を部分的に再開できるだろうというのが、財団の予測だった。(参考記事:「新型コロナ「接触通知アプリ」はどれほど有効なのか」

 しかしながら、このアプローチにおいては、接触者の70パーセントが隔離に応じる必要があると、ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの上級研究員、クリスタル・ワトソン氏は述べている。もし流行が広がりすぎれば、接触者の追跡はうまくいかず、追跡がうまくいかなければ、ワクチンなしでCOVID-19をコントロールするには、米国は週に3000万件の検査を行う必要があると、ロックフェラー財団の報告書にはある。同報告書ではこれを「1―3―30計画」と呼んでいる(検査数を週100万、300万、3000万と増やしていくという意味)。

 米国の新規感染者数は5月中旬以降ほぼ横ばいで推移した後、6月半ばからまた急増した。悪化を招いた原因は何だろうか。

「われわれはあまりにも検査、検査、検査と唱えすぎて、それで何が達成できるのかをよく理解していなかったのです」と語るのは、米ミネソタ大学感染症研究政策センター(CIDRAP)所長で、1―3―30計画の報告書の共著者でもあるマイケル・オスターホルム氏だ。「特定の地域で実施される検査数ばかりを重視せずに、どのような検査が必要なのかをよく考える必要があるでしょう」

 こうした状況においてもやはり、ハームリダクションが効果を発揮する。いくら精度の高い検査であろうとも、偽陽性が出るリスクは常にある。そのため都市、州、国などがあまりに多くの検査を一般市民に対してランダムに行うと、そうする必要のない人たちまで隔離してしまうことになる。

 やみくもに検査を行うのではなく、最も優先すべきは、COVID-19とみられる症状を持つ個人をできる限り早く見つけ出して検査を進めることだ。そうすれば、適切な患者をより早く隔離できる。このやり方を採用したニューヨーク、韓国、EUなどは、流行を抑え込んでいる。

「症状もなく、検査のための疫学的な特徴もない人たちを検査することを前提としたアプローチには、深い懸念を抱いています」と語るのは、ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの疫学者、ジェニファー・ヌッツォ氏だ。

 ヌッツォ氏は、最もリスクの高い集団からCOVID-19を根絶するために、介護施設や刑務所において全員の検査を定期的に実施するなど、週300万件以上の検査が必要だと考えている。一方で、週に3000万件の検査というのは非現実的だと氏は語る。なぜなら、サンプルを処理できる国内の研究所の数は限られているからだ。(参考記事:「新型コロナPCR検査の状況を読み解く「3種類の検査目的」」

次ページ:検査の陽性率を14日間で5%以下に

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