イルカが道具を使う狩り、同世代から学ぶ、初確認

「横のつながり」で学習、類人猿並みの知性

2020.06.29
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【動画】貝殻を巧みに使って魚を捕るイルカ、技術を仲間から学んでいた。シェリングの解説は1分前後から。実際の映像は2分25秒前後から。(解説は英語です)

「横のつながり」が一番強かった

 2007年、クリューツェン氏は、シャーク湾のイルカの研究を開始し、11年間で1000頭を超えるイルカを識別した。この間、19頭のイルカで、42回のシェリングを観察した。その半分は、2011年の海洋熱波の後の2年間に見られた。海洋熱波が巻貝の大量死を引き起こし、より多くの貝殻が海底に転がっていたのかもしれない。

 長期にわたる調査により、個々のイルカの家族史、年齢、性別、行動に関して、詳細な情報が蓄えられていたことは、シェリングの研究にも役立った。

 例えば、シェリングをするイルカたちは、他のシェリングをするイルカたちと一緒に行動していた。共に時間を過ごす仲間のまねをした可能性が高いと、論文の筆頭著者であるドイツ、コンスタンツ大学の博士研究員ソーニャ・ワイルド氏は言う。論文によると、シェリングをするイルカは、常に同世代と一緒にいる。

 この技術伝達には、どのような要因が関わっているのか。ひとつは環境要因が考えられる。つまりイルカがシェリングするようになったのは、単に貝殻が豊富な地域に生息していたからというものだ。もうひとつ、遺伝的な要因が関わっている可能性がある。

 そこで研究チームは、イルカの目撃データと遺伝的データや環境データを組み合わせ、イルカ間でシェリングを伝達する様々なパターンについて、コンピューターモデルを作成した。その結果、論文によれば、水平伝達モデルが、最有力だった。

 42件の観測例はデータセットとしては少ないが、シェリングは実際にはありふれた行動だろうと研究者は言う。わずか数秒の行動なので、ボートからではなかなか見られないだけかもしれない。

参考ギャラリー:優雅で楽しげなイルカたち 写真10点(画像クリックでギャラリーへ)
間近で撮影した様々なイルカたちの姿を10点の写真で紹介。(写真=BRIAN J. SKERRY)

人間に似ている

 チンパンジーと同様、イルカは緩やかにつながった社会で生活する。その中で、各個体は、グループ間を自由に移動する。すなわち、グループのメンバーが固定されている例えばヒヒの群れに比べ、様々な個体や行動により多く触れるということだ。(参考記事:「【動画】「手」つなぎ「名前」呼びあうオスイルカ」

 それは、人間に似ているとワイルド氏は語る。「友人と一緒にいることもあれば、家族と一緒のこともあります。それは、1日の間でも変わるのです」

 今回の新たな研究は、シェリングに関する環境要因や遺伝的要因を考慮に入れている点が優れていると、同氏は付け加える。「今回の長期的なフィールド調査の結果は、かけがえのないデータです。こうしたデータは、他のいかなる方法でも得ることはできないのです」

文=LIZ LANGLEY/訳=牧野建志

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