ブラックホールが謎の天体をのみ込んだ、重力波で初検出

中性子星にしては重すぎ、ブラックホールにしては軽い、天文学者ら困惑

2020.06.26
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 エゼル氏とカロゲラ氏は、謎の天体は質量の小さいブラックホールではないかと考えている。「物理学的に、太陽質量の2.6倍のブラックホールが存在できない理由はありません」とエゼル氏は言う。しかし2人とも、確実な証拠をつかむのは難しいだろうと指摘する。この連星系は、ほかの観測所で調べるには遠すぎるからだ。

 衝突した天体の質量の差が大きいことも、手がかりを得にくくしている。今回のブラックホールは相手の天体を丸ごとのみ込んでしまったが、ブラックホールの質量がもっと小さかったら、近づいてくる天体が変形し、ばらばらになる様子を見ることができたかもしれない。そのような「汚い」食べ方をしていれば、判別可能な痕跡が重力波の中に残ったはずだ。

「この天体の正体を特定できる可能性はないでしょう」とエゼル氏は言う。「それが中性子星だったことを示す証拠はありませんが、だからといってブラックホールだったと決まるわけではありません」

未知なる起源

 GW190814に関与した天体は、その正体はどうあれ、質量差の大きさという点で非常に重要だ。LIGOとVirgoが観測してきた衝突のほとんどが、質量が比較的近い天体どうしの衝突だったのに対し、今回衝突したブラックホールは太陽の23倍の質量で、軽い方の天体の約9倍も重いのだ。

「これまで見たことのないような現象です」とエゼル氏は言う。「以前はできなかったような重力波による検証や、このような連星系のでき方をめぐる問題に挑戦するきっかけになります」

 これだけ非対称な連星系の起源や形成環境を解明するのは非常に難しい。例えば、球状星団と呼ばれる、銀河の周囲を軌道運動している古い恒星の集団では、ペアになっているコンパクトな天体どうしの質量は非常に近いと推定されている。また、銀河の内部でも、孤立して進化してきた連星系に質量の偏りが生じる可能性はあるものの、重力波が観測できるほどの衝突が頻繁に起こるとは考えられていない。

 研究チームは、より奇抜な形成シナリオを検討している。例えば、複数の連星系の融合、ゆるやかに結合した星団、超巨大ブラックホールの周囲に円盤状に渦巻く物質などだ。

 しかし、無限の可能性をもつ宇宙ではよくあることだが、知られていないことが数多く残っている。

「中性子星の魅力の1つは、重力崩壊してゆく物質の最後の中継点であることです」とアルゾマニアン氏は言う。「物質が安定的に存在できる最も高密度の状態、つまり、それ以上の密度になったら内破し、自らの事象の地平線の中に崩壊して二度と見ることができなくなる状態というのは、どのようなものなのでしょうか?」

ギャラリー:ブラックホールの謎に迫る宇宙の画像 6点(写真クリックでギャラリーページへ)
NASAの望遠鏡が撮影した遠方の銀河では、中心のブラックホールのまわりを星々が環のように取り囲んでいる。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH)

文=NADIA DRAKE/訳=三枝小夜子

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