ブラックホールが謎の天体をのみ込んだ、重力波で初検出

中性子星にしては重すぎ、ブラックホールにしては軽い、天文学者ら困惑

2020.06.26
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時空のさざ波に耳をすませる

 光速で伝わる重力波は、経路上のあらゆる物体に押し寄せる。しかし、重力波による時空の歪みは非常に小さいため、検出するのは非常に困難だ。重力波検出器LIGOとVirgoでは、レーザー光を2方向のアームに分けてそれぞれ何度も反射させ、光が戻ってくるのに要する時間を測っている。宇宙の彼方から重力波が来て時空が伸び縮みすると、2つの光路長にわずかな差が生じるので、重力波が到達したことがわかる。

 重力波の検出は2015年に初めて成功し、2017年のノーベル物理学賞につながった。以後、重力波は何度も検出されている。そのほとんどがブラックホール同士どうしの衝突によるものだが、一部は中性子星どうしの衝突によるものだ。けれども科学者たちは、今回のGW190814にのみ込まれた天体については正体を特定できずにいる。

 衝突した2つの天体のうち、重い方の天体は明らかにブラックホールだが、軽い方の天体は、中性子星とブラックホールの質量ギャップと呼ばれるところにある。このような天体は非常に珍しい。質量ギャップ内のどこかで、物質は不安定になり、崩壊してブラックホールになってしまう。中性子星は、この限界ぎりぎりのところに位置している。

「物質が安定して存在できる密度には限界があります」と、国際宇宙ステーション(ISS)の中性子星観測装置NICERを使った研究を率いるNASAゴダード宇宙飛行センターのゼブン・アルゾマニアン氏は話す。「しかし、その限界がどのようなもので、限界を超えた物質に何が起こるのかはわかりません」

 これまでの観測から、中性子星の質量は最大でも太陽質量の2.1倍程度で、大半は1.4倍前後であることがわかっていると、中性子星とブラックホールの境界を調べている米アリゾナ大学のフェリアル・エゼル氏は説明する。太陽の2.5倍もの質量をもつ中性子星があることを示唆する観測もあるが、まだ確かなデータだとは言えない。そのうえ、中性子星の内部の物理過程を記述する理論は、膨れ上がった中性子星が崩壊しないようにしているものを突き止めるのに苦労している。

 一方、これまでに観測されているブラックホールの中では、太陽質量の5倍程度のものが最も軽い。つい最近まで、この中間にはほとんど何も存在していなかった。だがLIGOは、2つの中性子星が衝突してできた天体を2017年に検出している。その重さは太陽質量の約2.7倍だった。(参考記事:「中性子星合体の重力波を初観測、貴金属を大量放出」

 今回の衝突では、ブラックホールが別のブラックホールを共食いしたのか、それとも中性子星を食べたのかが現時点では不明である。

 エゼル氏は、「もし食べられた方の天体が中性子星だったとしたら、太陽質量の2.6倍もの質量をもつ中性子星が存在できることになります。パラダイムシフトを起こすような大発見です」と話す。

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