大量死で絶滅危機のサイガに朗報、ベビーブーム到来

2015年に20万頭が死亡し、絶滅が危ぶまれていた

2020.06.24
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
中央アジアの多くの地域と東欧の、ステップと呼ばれる乾燥した草原を移動して暮らすサイガ。写真はロシアで撮影された子ども。(PHOTOGRAPH BY IGOR SHPILENOK, NPL/MINDEN PICTURES)
[画像のクリックで拡大表示]

 中央アジア、カザフスタンの草原に、サイガというウシ科の動物が生息している。個体数が激減し、近絶滅種(Critically Endangered)に指定されているこの動物に、今年、明るい兆しがあらわれた。

 科学者らは、2007年から毎年春にカザフスタンのウスチュルト台地でサイガの子どもの数を調査してきた。結果は思わしくなく、たとえば2018年は58頭、2019年にはたった4頭しか見つからなかった。

 ところが2020年5月の調査では、サイガの子どもがなんと530頭も発見された。ベビーブームが訪れた可能性を示す、歓迎すべき兆候だ。

 1980年代までウスチュルト台地には、愛らしい大きな鼻をもつこの動物が何百万頭も暮らしていた。しかし、ソビエト連邦の崩壊後、アジアの伝統薬市場でサイガの角の需要が高まり、密猟が急増。サイガは中央アジアの生息域全体で激減した。

 追い打ちをかけるように、2015年には危険な細菌が大発生し、約20万頭ものサイガの命が奪われた。残った個体群も、間もなく70%以上が消滅した。(参考記事:「20万頭ものサイガ大量死、原因は細菌の増殖だった」

草地にうずくまる2頭のサイガの子ども。カザフスタンのウスチュルト台地では、この春500頭以上の子どもが生まれた。(PHOTOGRAPH BY BAKHTIYAR TAIKENOV / AСBK)
[画像のクリックで拡大表示]

 だが現在、子どもだけでなくおとなの集団も過去10年間には見られなかった規模になっていると、非営利団体「カザフスタン生物多様性保全協会(ACBK)」のサイガの専門家、アルバート・サレムガレイエフ氏は語る。2019年の調査によると、カザフスタンのサイガの個体数が33万4400頭と、その2年前に比べて2倍以上に増えていたという。

「これにはみんな、非常に興奮しています」と、カザフスタン農業省林業・野生生物委員会の報道官、サケン・ディルダクメット氏は語る。「あの大量死の後、国の森林監視員による警備と保護の努力により、サイガの個体数は毎年着実に増えています」

サイガに立ちはだかる脅威

 密猟は減ったとは言え、サイガがさまざまな脅威にさらされていることに変わりはない。

 たとえば2014年、カザフスタン政府は密輸と麻薬密売を防ぐ目的で、ウズベキスタンとの国境沿いに柵を設置した。

「まったく役に立ちそうにない柵でした。辺ぴな地域に、有刺鉄線を張っただけでしたから」と、英オックスフォード大学の保全科学者で、サイガ保護連合の事務総長を務めるE・J・ミルナー=ガランド氏は言う。「しかし、サイガの移動を阻むには効果てきめんでした」

次ページ:絶滅の瀬戸際

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 動物の箱舟

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

世界の動物園・保護施設で飼育されている生物をすべて一人で撮影しようという壮大な挑戦!

定価:本体3,600円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加