4年間で2万回超の奇妙な群発地震、ついに謎を解明

断層の推移を克明に描き出すことに成功、原因は「流体」、米国カリフォルニア

2020.06.22
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 2016年初頭、何の前触れもなく、南カリフォルニアで静かな群発地震が始まった。地震は毎日起こるわけではなく、そのほとんどが人間にはわからないほど小さな揺れだったが、何カ月たっても終息せず、回数は増えていった。

 2018年の春には毎月数千回の小さな地震が発生するようになり、ランプが揺れるほどの地震も発生して、近くの町の住民を不安にさせた。4年間に発生した地震は2万2000回以上にのぼったが、発生源は謎に包まれていた。

 この群発地震をこれまでで最高の分解能で調べた科学者チームがその原因を特定し、6月19日付けで学術誌「サイエンス」に論文を発表した。

 今回の分析では、コンピューターアルゴリズムを用いて小さな地震が発生した場所と時間を明らかにし、蜘蛛の巣のように広がる断層破砕帯(断層の運動によって岩石が壊れて砕けた部分)沿いの群発地震活動の推移を驚くほど詳細に描き出した。完成した地図は、断層系に何らかの液体が自然に流入したことで群発地震が引き起こされたことを示している。

 この研究は、世界各地で観測されているほかの群発地震にも液体が関与している可能性を示唆しており、地質学者が大小の地震の基礎となる物理過程をよりよく理解するのに役立つ可能性がある。また、今回の手法は世界の地震解析技術の向上に役立つことが期待される。地震のリアルタイム観測技術も向上するかもしれない。

「信じられないほど詳細に描き出されています」と、プエルトリコ大学マヤグエス校のプエルトリコ地震ネットワークの地震学者エリザベス・バナコア氏は称賛する。「地震学がこれから進んでゆく方向を示す、最先端の研究だと思います」

大きな地震とは異なる群発地震の経過

 米ワシントン大学の海洋地震学者エミリー・ローランド氏によると、断層に沿った破砕帯はかつては単純な構造だろうと思われていたが、「実際には非常に複雑な場所」だという。褶曲(しゅうきょく)している断層もあれば、地中で交差している断層もある。今回調べられた断層破砕帯は、数キロにわたって広がる地下の迷宮を作り上げていた。

 実は、研究者たちは2017年まで、この群発地震に気づかずにいた。彼らの注意を喚起したのは、好奇心の強い市民が南カリフォルニア地震ネットワークに送ってきたメールだった。メールの差出人は、人がほとんど住んでいない場所で小さな地震が頻発していることについて知りたいと情報を求めていた。

 論文の筆頭論者である米カリフォルニア工科大学の地球物理学者ザカリー・ロス氏は、「この地域をざっと見ただけでは、特別なことは何もないように思われました」と言う。非常に活発なサンジャシント断層帯から約16kmのところに位置するため、しばしば小さな揺れを感じるのだ。しかし、この地域の地震記録をよく見てみると、何かあるはずだというメールの差出人の指摘が正しかったことがわかった。この人物がメールを出す約1年前の2016年から、米国先住民であるカウィーア族(カフイラ族)の居留地の端に沿って、小さな群発地震が発生していたのだ。

次ページ:小さな地震をアルゴリズムで検出、見えてきたのは

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