1922年6月24日、3000人以上の黒人がワシントンDCの通りを無言で行進し、黒人へのリンチに抗議した。当時のニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、あるプラカードには「僕たちは15歳です。同い年のひとりが生きたまま焼かれました」と書かれており、別のプラカードには「議会が合憲性を論じているとき、焼かれた体から立ち上る煙で天は黒く染まった」と書かれていた。(PHOTOGRAPH BY BETTMANN, GETTY IMAGES)
この一連の記事には、一部に暴力的な写真が含まれています。本文に述べられている残虐な事件の数々を物語る歴史的資料として、リンチによって殺害されたルービン・ステイシーの写真を掲載することは重要であると考えます。黒人に対する残虐なリンチを撮影した写真は、かつて白人至上主義を永続させるために使われていました。

 黒人のジョージ・フロイド(46歳)さんは動画の中で、頭を路面に押し付けられ、苦しそうに顔を歪めている。膝でフロイドさんの首を圧迫しているのは、白人の警察官だ。「息ができない」。フロイドさんは、繰り返し訴えた。「頼む。息ができないんだ。頼むよ」

 動画の撮影者は、携帯電話を構えたまま警官にやめるよう訴えたが、警官はやめようとしなかった。他に3人の警官がそばに立っていたが、フロイドさんは8分48秒もの間押さえつけられ、息絶えた。

「これは、現代のリンチ(私刑)です」。歴史家であり文化評論家、そして作家のアリカ・コールマン氏は言う。

「大の大人がなすすべもなく地面に横たわり、警官に首を押さえつけられ、命乞いをしているんです。ひとりの人間が別の人間を支配するという、究極の権力誇示であると、私には思えます。その昔、黒人はあらゆる理由でリンチを受けていました」

ジョージ・フロイドさんの殺害現場に座り込んで兄の死を悼む弟のテレンス・フロイドさん(右から2人目)。ジョージさんは、2020年5月25日、ミネアポリスのこの交差点で殺害された。テレンスさんは、全米で起こっている暴力的な抗議活動を終わらせるよう呼びかけ、「そんなことをしても、兄は戻ってきません」と訴えた。(PHOTOGRAPH BY BEBETO MATTHEWS, ASSOCIATED)

4400人以上の黒人が犠牲に

 米国の非営利団体「公正な裁きのイニシアティブ(the Equal Justice Initiative)」によると、1877年から1950年の間に、米国では4400人以上の黒人の男性、女性、子どもが白人のリンチによって殺された。銃で撃たれ、皮膚をはがされ、生きたまま火をつけられ、棒で殴られ、木から吊るされた。司法機関である裁判所の前庭でリンチが行われたこともあった。

 一部の歴史家は、南北戦争が終わってから数千人の黒人に行われたリンチが、現代の自警団による襲撃や警察による暴力につながっていると指摘する。しかも、そうした行為が処罰の対象になることはめったにない。

 フロイドさんの死の2カ月前、ケンタッキー州ルイビルで26歳の黒人女性ブリオナ・テイラーさんが、真夜中にノックもせずに家の中へ踏み込んできた警官に射殺された。さらにその3週間前には、ジョージア州グリン郡で、25歳の黒人男性アーマード・アーベリーさんが自宅近くをジョギング中にトラックに乗った白人親子に追いかけられ、殺害された。

 これらの事件をきっかけに、400年に及ぶ黒人抑圧の歴史という古傷が開かれたと、歴史家たちは見ている。新型コロナ感染症のパンデミックで、アフリカ系米国人の罹患率と死亡率が他の人種に比べてはるかに高いなかで立て続けに起こった事件に、人々の怒りは爆発した。全米で激しい抗議活動が起こり、さらにそれが全世界へと拡大した。パリ、シドニー、アムステルダム、南アフリカでも、群集が町を行進して、正義を要求し、警官による暴力を糾弾した。

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