およそ1億1000万年前、現代のカナダ、アルバータ州北西部の焼け野原で、シダの葉を食べるノドサウルス科の恐竜ボレアロペルタ・マークミッチェリ。このほど、その胃の内容物を詳細に調べた最新の研究結果が発表された。(ILLUSTRATION BY JULIUS CSOTONYI)
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 今から1億1000万年前の白亜紀、現在のカナダ、アルバータ州の森を、1頭の恐竜がゆっくりと歩いていた。森林火災の後だったのだろう、恐竜は焼け野原から伸びた柔らかいシダの葉を食べていたようだ。しかし、まもなくこの恐竜は死亡し、海へと流された。そして長い時間をかけて堆積物のなかに埋もれていった。

 時は流れて西暦2011年、オイルサンド採掘場の作業員が、鎧のような装甲に覆われたこの恐竜の化石を偶然掘り当てた。これまで発見された同種の化石としては最も保存状態が良いものだった。(参考記事:「鎧をまとった奇跡の恐竜化石」

 この「奇跡の恐竜」については、これまで外見やその機能など数々の研究がなされてきたが、今回さらに新たな研究成果が発表された。恐竜の胃の中に残っていた化石から、この恐竜が何を食べていたのかがわかり、さらに恐竜が死んだ季節まで明らかになったのだ。(参考記事:「奇跡の恐竜、ゴツゴツの鎧で恋人探した?」

ギャラリー:奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点(写真クリックでギャラリーページへ)
奇跡の装甲恐竜ボレアロペルタ・マークミッチェリの頭部右側。タイル状の骨が特徴的だ。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「保存状態がとても良かったので、胃の内容物についてもかなりはっきりしたことが言えます」と、論文の筆頭著者で、カナダ、ロイヤル・ティレル古生物学博物館の学芸員ケイレブ・ブラウン氏は語る。ナショナル ジオグラフィック協会が支援したこの論文は、6月3日付の学術誌『Royal Society Open Science』に発表された。

「この恐竜がどんな風景のなかを歩いていたのか、色々と想像をかきたてられます」と、カナダのロイヤル・ブリティッシュ・コロンビア博物館の恐竜学芸員ビクトリア・アーバー氏は言う。「この恐竜が生きている間に起こった出来事を、かなり具体的に思い描くことができるのです」

先史時代の食事

 化石化された胃の内容物が見つかること自体まれだが、草食恐竜の最後の食事がはっきりと残っているのはさらに珍しい。骨が保存されるような化学的条件は、植物を分解しやすい条件でもあるからだ。それに、動物の体が堆積物に埋もれると、後から胃に入ってきたものが混じるため、その動物が食べたのが何かを見分けられなくなる。

 この化石のほかに、胃の中で植物が見つかった装甲恐竜が一つだけある。オーストラリアで見つかったクンバラサウルスだ。だが、今回の恐竜ボレアロペルタ・マークミッチェリ(Borealopelta markmitchelli)はずっと大きく、体長およそ5.4メートル、生前の体重は1400キロもあり、胃の内容物の保存状態も良かった。

次ページ:恐竜の胃の中身

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