モデルナ社のワクチン候補、臨床試験の最終段階へ

3万人を対象に第3相試験、mRNAワクチンはなぜ有望か

2020.07.29
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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の表面はたんぱく質のスパイク(赤)に覆われている。モデルナ社のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは、このスパイクを認識するよう人体に教えることで、中和抗体(白)の“衛兵”を作り出し、感染前にコロナウイルスの増殖を防止する。(MODEL AT ATOMIC RESOLUTION IN BY VISUAL SCIENCE)
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 新型コロナウイルスのワクチンの有力候補が、市場に投入されるための重要な節目をひとつ越えた。米モデルナ社が、ワクチン臨床試験の第3段階をスタートさせたのだ。

 新型コロナウイルスはすでに半年以上にわたり、多数の感染者と死者、そして経済的混乱をもたらしている。ワクチン開発は、人々が日常を取り戻すための希望の光だ。モデルナ社のほかにも、英オックスフォード大学のグループがブラジルで第3相試験に入るなど、開発競争はますます盛んになっている。

 モデルナ社は5月18日、健康な被験者が同社のmRNAワクチンに反応して「中和抗体」を産生したと発表していた。抗体とは、感染を防ぐうえで重要な、いわば免疫系の“衛兵”だ。

 ただし専門家らは、中和抗体が確認できたのは、米国立アレルギー感染症研究所の臨床試験に参加した45人のうち8人のみだと指摘していた。モデルナ社はさらに2カ月後、第1相試験で単に抗体を作る以上の防御反応があったかどうかについて、十分な情報を備えた査読済み研究を発表した。

 公表された情報からは、同社がこの先、前例のないことを成し遂げる可能性がうかがえる。世界初となるヒト用mRNAワクチンの承認を得ることだ。

2020年3月16日、COVID-19ワクチン候補の第1相臨床試験において、レベッカ・シラル氏に投与を行う薬剤師のマイケル・ウィッテ氏。シアトルにあるカイザー・パーマネンテ・ワシントン健康研究所は、第1相臨床試験に参加している3施設のうちのひとつで、シラル氏は同研究所でワクチン投与を受ける被験者としては3人目。(PHOTOGRAPH BY TED S. WARREN, AP PHOTO)
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 モデルナ社の第3相試験は、30の州とワシントンDCにある89地域において、推定3万人の協力者を対象に行われる。目的は、2回のmRNAワクチン投与によって、新型コロナウイルスへの感染を防げるか、感染者の死を防げるか、あるいはその両方かを決定することにある。

 米国政府はワクチン開発加速プロジェクト「オペレーション・ワープ・スピード」の一環で、モデルナ社のmRNAワクチン開発を推し進めているが、これに対し拙速との声も上がっている。もし今回の第3相試験が失敗すれば、その声の正しさを示すことになるかもしれない。(参考記事:「コロナワクチン、安全性と有効性をどこまで追求すべきなのか」

 今回のプロジェクトでは、オックスフォード大学のワクチン候補や米ジョンソン・エンド・ジョンソン社が開発しているワクチン候補でも、米国における3万人規模の第3相試験をすでに予定している。

次ページ:mRNAワクチンとは何か

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