マスクの洗い方は? 手袋の効果は? 新型コロナ感染予防

今さら聞けない基礎をおさらい、コロナ感染予防アイテム

2020.06.01
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布マスクの洗い方

 WHOおよびCDCによれば、洗濯機で普通に洗えば布にコロナウイルスは残らない(編集部注:CDCは洗濯機と乾燥機が使える布のフェイスマスクを使い、定期的に洗濯するように推奨しています)。

「コロナウイルスはエンベロープウイルスなので、洗剤に弱いんです」と、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のウイルス学者、レイチェル・グレアム氏は言う。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどは、表面張力によって脂質やたんぱく質が繋ぎ止められたデリケートな「エンベロープ」に包まれ、守られている。

 ほとんどの家庭用および業務用の洗濯洗剤やせっけんには、表面張力を低下させてこのエンベロープをたやすく破壊する「界面活性剤」が含まれている。そう説明するのは、米ネブラスカ大学医療センターの病理学者、ジョシュア・サンターピア氏だ。

 界面とは物質の境の面のことで、水と油脂の境界面もあてはまる。せっけんなどの界面活性剤の分子の一端は脂質になじみ(親油基または疎水基)、もう一方の端は水になじむ(親水基)。まず脂質になじむ側がコロナウイルスのエンベロープに入り込んで膜を破壊する。そして、ミセルと呼ばれる球状の構造体にエンベロープの脂質が取り込まれ、水で洗い流されるというわけだ。

「界面活性剤とエンベロープの相互作用は、ウイルスの感染力を素早く失わせます」と、サンターピア氏は言う。

 洗剤を使いさえすれば、洗濯機で利用する水の温度は関係ない。「綿でできたマスクは高温にも耐えられるので、もしも高温で洗う方が安心だと感じるようであれば、そうしたらよいと思います」とグレアム氏は話す。さらに乾燥機を使用すれば、高熱によりほとんどの微生物を殺すことができる。(編集部注:日本で一般的な繊細な生地のガーゼマスクなどについては、厚生労働省は手洗いを推奨し、乾燥機を使用しないようにすすめています)

(参考動画:日本の厚生労働省及び経済産業省が公開した布マスクの洗い方)

医療用使い捨て不織布マスクやN95マスクの場合

 布製のものと違って、使い捨てを想定している医療用マスクは合成繊維の不織布からできており、通常の洗濯には耐えられない。

「洗ってしまうと、フィルターとしての機能を大幅に損ないます」とサンターピア氏は話す。ただし、ウイルスのような小さな粒子を効果的にフィルタリングし、顔をぴたりと覆うドーム形のN95マスクについては、医療従事者たちは必要に迫られてマスクを再利用している。そのため、フリン氏やサンターピア氏の職場では、マスクの効果を落とさないような医療用の消毒剤が用いられている。

 サンターピア氏の職場であるネブラスカの病院ではさらに、高エネルギーの紫外線であるUV-C光を用いてマスクの消毒を行っており、これによってマスクは複数回の利用が可能となる。CDCによれば、UV-CはUV-AやUV-Bよりも強力な紫外線で、癌を発生させるリスクが高いため、UV-Cを扱う訓練を受けた人による監督のもとで行われなければならない。

なぜ、生き物は病気になるのか?
【動画】牛乳、羊、そしてワクチンの共通点と言えば? 答えはルイ・パスツールだ。彼はどのように、病原菌が病気を引き起こすことを世界に証明し、医学の飛躍的な進歩に貢献したのだろうか。(解説は英語です)

 つまり一般市民にとっては、医療用マスクは使い捨てにするのが理想的ということだ。もし再利用するなら、ウイルスの感染力がなくなるまで置いておくのがよい。

 と言ってもそれは一体、どのくらいの期間なのか。新型コロナウイルスが物質表面、空気中、そしてマスクでどの程度長く感染力を保つのかは、科学者たちがいまだに調査中だ。4月下旬に発表された査読無しの論文によれば、N95マスクの表面にはそれなりに長い時間、コロナウイルスの形跡が見られたという。

「数時間、ひょっとしたら数日間にわたって、ウイルスはマスクを含めた様々な表面の上で感染力を保っている、ということです」。同論文の著者の一人であり、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の感染症専門家であるアマンディーン・ギャンブル氏はそう話す。同氏は、コロナウイルスがマスクの繊維の間に閉じこめられるのではないかと考えている。その場合、一定時間経過後に感染力が自然に失われるまでは、感染の危険が続くことになる。このためCDCでは、N95マスクの着用が合計8時間を超えないよう推奨しており、製造者が特に異なる見解を示さない限り、5回利用した後には廃棄すべきとしている。

 しかし、病院の外であっても、公共の場で繰り返し利用したマスクにはウイルスが蓄積し、着用者が誤ってウイルスに接触する可能性が高まる。

「覚えておくべきは、感染リスクは接触したウイルス粒子の数に比例するということです」と同氏は言う。「リスクはあるかないかではなく、段階的なものです」

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