心臓を一突きされたハクトウワシ 真犯人は意外な動物

米国北東部でハクトウワシの個体数が回復。攻撃的な水鳥とのいさかいが生まれている

2020.06.30
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【参考動画】超スローでとらえたハクトウワシの餌を巡る争い
ハクトウワシの餌を巡る争い。通常、メスが最初に食べ、オスはおこぼれに預かる。

 アビ保護委員会のクーリー氏は、胸部の骨が穴だらけのアビを見たことがあるという。「私たちが調べているアビの死体の半数以上に、命を落としたワシと同じような刺し傷の跡がありました」

 ちなみにニューハンプシャー州では、26年以上も同じ縄張りを守り続けている長生きのアビも確認されている。

「アビにとって湖はとても重要です。なにしろ彼らにとっては小さな王国のようなものですから」とクーリー氏は話す。

弱肉強食の世界

 成鳥のアビの体重は5キロ近くになるため、ハクトウワシでも巣まで運ぶには大きすぎる。

 だが、ひなとなると話は別で、ワシから見れば格好の獲物となる。研究者は最近、個体数を増やしているハクトウワシがニューイングランド州のアビの個体数にどのような影響を与えるかを調査し始めた。

 クーリー氏が主導した研究では、ハクトウワシが近くにいる場合、アビの巣は放棄されるケースが多いことが分かった。

「だからとって、必ずしも悪いことではありません」と指摘するのは、バーモント州生態系研究センターの生物学者としてアビを研究するエリック・ハンソン氏だ。

 ハンソン氏はメール取材に対し、「バランスは保たれています」とコメント。「ワシは食べるために、アビはひなを守るために、どちらも最善を尽くします」

 バーモント州の各地では過去20年、アビの個体数は増加または安定している。ダウリア氏によれば、米国北東部で、アビの個体数の約70%が生息するメーン州でも繁栄しているという。

 その一方で、ニューハンプシャー州では絶滅危惧種に指定され、マサチューセッツ州では特別懸念種に分類されている。いずれも湖岸の開発、釣り具、気候変動といった脅威によるものだ。

ワシの死の原因が人でなければよい

 アビとハクトウワシは敵対しつつも互いを絶滅に追いやるようなことはないようだ。クーリー氏は、昔からの関係を取り戻そうとしているように見えるとは述べている。

 同様の例はいくつもある。保護活動のおかげで、ハイイロアザラシが生息地のケープコッドに戻ってきたとき、アザラシを追うホホジロザメも目撃されるようになった。1990年代半ば、イエローストーン国立公園にオオカミが再導入された際には、ヘラジカからコヨーテ、ポプラからヤナギに至るまで、科学者が当惑するほど生態系に変化が見られた。 (参考記事:「【動画】ワシが獲物を横取り、キツネごと空中へ」

 保護が強く望まれているハクトウワシを、ハシグロアビが殺してしまったからと言っても、自然界でこうした出来事が見られることこそが、種の回復のゴールになるとクーリー氏は考えている。

「ハクトウワシの死因が、鉛製の釣り具が原因で命を落とすことに見られるような人間に関係したものでなくなってほしいですね。ワシにとっての最大の脅威がアビだけになる日が早く来てほしいと願っています」

ギャラリー:世界の美しい鳥たち4(写真クリックでギャラリーページへ)
ハクトウワシとウォールアイ (Photograph By Jerry am Ende, National Geographic Your Shot)

文=JASON BITTEL/訳=米井香織

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