心臓を一突きされたハクトウワシ 真犯人は意外な動物

米国北東部でハクトウワシの個体数が回復。攻撃的な水鳥とのいさかいが生まれている

2020.06.30
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ハシグロアビは無害な鳥に見えるかもしれないが、縄張り意識が強く、生息地に侵入するものは、どんな相手でも激しく攻撃する。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 2019年7月、米メーン州ブリッジトンの猟区の管理所に変わった通報があった。死んだハクトウワシがハイランド湖に浮かんでいるというのだ。生物学者はハクトウワシは撃ち殺されたか、鉛製の釣り具で中毒死したと考えた。どちらも、野鳥の死因としてはよくある話だ。 (参考記事:「【動画】泳ぐワシ!? おぼれかけたところを救出」

 ところが、事実は違った。ハクトウワシの死体を検査したところ、心臓にまで達する刺し傷があったのだ。この傷をつけたのは銃ではなく、水鳥の一種ハシグロアビの短刀のようなくちばしだった。

 メーン州内水漁業野生生物局の野生生物学者ダニエル・ダウリア氏は「アビがワシを殺した記録はなく、これが初めてです」と話す。

 ハクトウワシの近くでアビのひなの死体も見つかっていることから、ワシがアビの巣を襲撃し、ひなを守ろうとした親がくちばしでワシを突いたのではないかとダウリア氏は考えている。メーン州を含むニューイングランド地方で、似たような報告がある(ダウリア氏)。1970年代に絶滅の危機に直面したハクトウワシだが、その後、個体数が順調に回復していることが背景にある。

 アビとワシはどちらもハイランド湖の頂点捕食者で、お互いに競い合う存在だ。

 一見すると、アビは平和を好む穏やかな水鳥に見えるが、カナダガンからアメリカホシハジロ、そして何より仲間のアビまで、無差別に襲撃する凶暴な面がある。

 ニューハンプシャー州で活動するアビ保護委員会の上級生物学者ジョン・クーリー氏は「何千年も前から続いていることです」と語る。「湖の上で起きている適者生存です」

 ごく最近まで、ハクトウワシの個体数は少なく、アビとの争いを目にするような機会はなかった。米国の国鳥であるハクトウワシは2007年に米国の絶滅危惧種リストから外されたばかりで、現在、全米に数十万羽が生息し、メーン州には700組以上のつがいがいる。 (参考記事:「フォトギャラリー:復活したハクトウワシ」

 今回の出来事を知った専門家たちは「絶滅の危機にひんした種が、本来はどのように行動しているのかを知っておくべきだ」と口をそろえる。

アビの強力な武器

 ところで、ダウリア氏にアビの攻撃を説明してもらった。アビは水面で争いを繰り広げたりはしない。一度、水中に潜って「魚雷のように」水面に飛び出し、敵をくちばしで一突きするのだという。もちろん、通常であれば、多くの場合の「敵」とはライバルのアビだ。

「縄張り争いで、よく見られる光景です」とダウリア氏は話す。「攻撃されて負傷したアビが、命を落とすこともあります」

【参考動画】超スローでとらえたハクトウワシの餌を巡る争い
ハクトウワシの餌を巡る争い。通常、メスが最初に食べ、オスはおこぼれに預かる。

次ページ:自然界のありふれた出来事と見るべき

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