動物たちの多彩なフェロモン、女王蜂の支配から猫のすりすりまで

陸海空、見えないけれど豊かに広がるにおいの世界

2021.01.13
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ホルモンも「におう」

 ホルモンのにおいの合図の一つだ。

 学術誌「Hormones and Behavior」に掲載された論文によれば、男性は排卵期、すなわちもっとも子孫を残しやすい女性のにおいに魅力を感じやすいという。エストロゲンの上昇など、女性ホルモンの周期的変化を、男性がかぎ分けられるからかもしれない。

 テストステロンというよく知られている男性ホルモンも、多くのオスの行動に影響を与える。オスのアフリカゾウには、年に一度、テストステロンが急上昇する時期が1カ月ほどある。この時期は「マスト」と呼ばれ、群れの支配権をめぐってオス同士の争いが起きやすくなる。(参考記事:「高齢ゾウほど交尾に積極的、50代はフル回転、研究」

 マスト期のオスは攻撃的で、積極的に交尾を行おうとする。逆に、未成熟の若いオスはマスト期にハチミツのようなにおいを出す。これは、自分は脅威ではないという他のオスへの合図になる。

情緒の安定に役立つフェロモン

 ナビゲーションや若い個体の食料確保、平静さの維持など、他の用途でフェロモンを活用している動物もいる。

 アリの中には、食料を探すときに「道しるべフェロモン」を出す種がいる。パンくずの代わりに化学物質であるフェロモンを道に残し、それをたどっていけば自分や仲間が迷わずに食料源に到達できるというわけだ。

 生まれたばかりのアナウサギの子どもは、母親の乳首付近から分泌される乳腺フェロモンに反応することで、すばやく乳首を見つけて乳を飲むことができる。このフェロモンは、母乳の中にも存在する。

 このような秘密のにおいは、気づかぬうちに皆さんの家の中にも漂っているかもしれない。

 イエネコは顔にある分泌腺からにおいを出しており、それを周囲の物や他の動物、そして人にもつけている。顔をすりすりとこすりつけるこの行動は「バンティング」と呼ばれ、ネコを落ち着かせる効果がある。

ギャラリー:地球の奇跡!目を疑うほど色彩豊かな動物たち 写真42点(写真クリックでギャラリーページへ)
ロージー・メープル・モス(Photograph by Wayne Gammon, National Geographic Your Shot)

文=LIZ LANGLEY/訳=鈴木和博

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