感染症はあの手この手で体に深刻なダメージを与えるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、そのほとんどを引き起こしているかのようだ。このウイルス(SARS-CoV-2)はまず肺を攻撃して肺炎や呼吸不全を引き起こし、その約5人に1人が多臓器不全に陥る。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が続く中、多数の微小血栓や、若者の脳卒中、さらには、「コロナのつま先」と呼ばれる謎の炎症反応や子どもの全身の発疹など、新型コロナウイルスに感染した人の珍しい症状が報告されるようになっている。
これらの症状は奇妙で恐ろしいかもしれない。だが、ウイルス医学の世界では以前から知られていたもので、ある程度は予想されていた。体は一人一人違うので、ウイルスに感染する人が何百万人もいれば、奇妙な症状が出てくるのは不思議ではない。では、患者の体では何が起こっているのだろうか? それはどのくらいの頻度で起こるのだろうか?
これらの珍しい症状について現時点でわかっていることと、治療に向けて解明しなければならないことをまとめる。
基本は呼吸器疾患だが
新型コロナウイルス感染症は、まず呼吸器疾患の症状を呈する。ウイルスは鼻、のど、肺の細胞に侵入して複製を開始し、インフルエンザのような症状を引き起こす。肺炎に進行したり、最悪の場合、肺に穴をあけることもある。(参考記事:「新型コロナウイルスに感染するとこうなる」)
しかし、一部の患者では免疫系が異常をきたし、大量のサイトカインが放出される。サイトカインとは、免疫細胞を感染した現場に駆けつけさせる、防犯アラームの役割をするタンパク質だ。ところが、あまりにも多くのサイトカインが放出されると、免疫細胞は出会ったものを軒並み殺しはじめる。「サイトカインストーム」と呼ばれるこの反応は、大規模な炎症を引き起こして血管を傷つけ、肺胞に体液が浸み込んで呼吸不全を引き起こす。サイトカインストームが肝臓や腎臓を損傷すれば、多臓器不全が起こる。(参考記事:「コロナ患者、本当に怖い「免疫システムの暴走」」)
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