「見えない地滑り」が海底で頻発、原油流出事故の原因にも

きっかけはなんと1000キロ以上離れた地震だった、メキシコ湾

2020.05.21
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 2017年、太平洋岸の地震を調べるためにファン氏がUSArrayのデータを使い始めると、すぐに不思議なことに気づいた。地震がめったに起きないメキシコ湾に、信号がいくつも記録されているのだ。ファン氏らは波の特性を分析し、再現するモデルを構築、それらの波の多くが海底地滑りの痕跡であると確信した。

(SOURCE: FAN AND OTHERS, "ABUNDANT SPONTANEOUS AND DYNAMICALLY TRIGGERED SUBMARINE LANDSLIDES IN THE GULF OF MEXICO," GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, 2020; BUREAU OF OCEAN ENERGY MANAGEMENT)

 ファン氏らは2008〜2015年に継続的に収集されたデータを調査し、メキシコ湾で発生した85回の明白な海底地滑りと、それに関連する表面波を特定した。ファン氏らが最も驚いたのは、特定された海底地滑りの90%近くが、1000キロ以上離れた場所で地震が起きた後、数分以内に発生していたことだ。

 これらの地震のほとんどは、太平洋岸北西部とメキシコの間を走る太平洋プレートと北米プレートの境界で起きたものだった。多くがマグニチュード5程度で、カリフォルニア州では「ニュースにすらならない」ほど小さい地震だと、ファン氏は説明する。

 調査によると、さらに遠くで起きた大きな地震が海底地滑りを引き起こすことはなかった。ファン氏は、メキシコ湾の海底地滑りを引き起こす最大の要因は地震の強さではないと考えている。ただし、遠く離れた地震がどのように地滑りを引き起こすのかを解明するにはさらなる研究が必要だと、ファン氏は強調する。

「さらに、海で実験を行い、海底地滑りを引き起こす物理的機構をすべて特定する必要があります」

「最悪」の石油流出事故

 今回の研究成果が浮かび上がらせるのは、メキシコ湾に散らばる石油、ガス掘削施設への不安だ。こうした石油、ガスのプラットフォームやパイプラインに不備があれば、地滑りをはじめとした地質学的な脅威に直面する恐れがある。

「海底地滑りによるプラットフォームの破壊はあり得ないことではありません。実際、すでに起きています」と、フロリダ州立大学の海洋学教授イアン・マクドナルド氏は話す。氏は今回の研究に参加していない。「海底地滑りによる原油流出事故も、あり得ないことではありません。実際、すでに起きています」

次ページ:トランプ大統領が解禁した海域で

おすすめ関連書籍

にわかには信じがたい本当にあったこと

ナショナル ジオグラフィックが伝える驚天動地の地球の姿。宇宙、人体、怪物、歴史、動物、水中など、幅広いテーマから驚きの事象・奇妙な生き物を紹介。

定価:本体2,000円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加