マウンテンゴリラ、インゴ・アーント氏撮影
人間に近い仲間であり、これほど力強い動物に、ここまで近づけたときの感覚は決して忘れられないとアーント氏は語る。(撮影ストーリーはギャラリーで)(PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT)

 曇りの日に森の藪から姿を現したシルバーバック(成熟したオスのゴリラ)。生まれたばかりの子どもに授乳するメスのトラ。30メートルもの木の高みを登っていくオランウータン。

 ほとんどの人は、このような珍しい瞬間を実際に目にすることはない。だが、野生動物写真家の根気強い努力のおかげで、私たちもまるでそこで見ているかのような経験をすることができる。写真の中には、何年も試行錯誤を繰り返し、人里離れた地で長時間、ハエや蚊、ヒルにたかられながら行った撮影の成果も少なくない。

 そこで今回、ナショナル ジオグラフィックで活躍する野生動物写真家に連絡を取り、長年の活動で印象に残っているシーンを尋ねた。

 かつてハンターたちは、アフリカで最も仕留めるのが難しい動物であるゾウ、ライオン、ヒョウ、サイ、アフリカスイギュウを「ビッグファイブ」と呼んで追い回した。だが現在、写真家や映画製作者、自然保護活動家、そして一般の人びとは、猟銃ではなくカメラを手に、写真に収めたい、または収めてほしい絶滅危惧種の「ニュー・ビッグファイブ」を選ぼうとしている。これはアフリカに限らず、世界中で絶滅の危機に直面する動物たちについて注意喚起する新プロジェクトであり、今回連絡を取った写真家はいずれも、その参加メンバーだ。

 例えば、写真家のエイミー・ビターリ氏は、トゥイガと名付けられた親を失ったキリンと野生動物飼育員が分かち合った穏やかな瞬間を、その1枚に選んだ。若いキリンが飼育員のレクピナイ氏に鼻をすりつけてキスをしているこの写真は、種を超えて絆が結ばれることを教えてくれる。

キリンと飼育員(Photograph by Ami Vitale)

「キリンはまさに今、『静かなる絶滅』と呼ばれる危機に直面しています」と、仕事で100カ国以上を訪れたビターリ氏は話す。「現在の推計によると、アフリカ全体のキリンの個体数は過去30年間で4割も減少し、1980年代後半の約15万5000頭から現在は10万頭未満になってしまいました」(参考記事:「キリンが直面する「静かなる絶滅」」

 残念なことに、これはキリンだけの問題ではない。国連が2019年に発表した報告書によれば、現在、約100万種が絶滅の危機にさらされている。

次ページ:絶滅との闘いにおける強力なツールは

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

2019年10月号

消えゆく生命のポートレート/大海原で生き続ける/キリンの引っ越し/ガラス瓶の中の魚たち/恐竜化石は誰のもの?

かつて地球にぶつかった小惑星が大量絶滅をもたらしたように、今、人類が生き物たちの大量絶滅を引き起こしつつある。私たちは何を知るべきなのか、今月は一冊まるごと「絶滅」を考える。特製付録付き!塗り絵ブック「地球に生きる仲間たち」

価格:本体1,083円+税

おすすめ関連書籍

写真家だけが知っている 動物たちの物語

世界で最も権威のある写真賞の一つ「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」の受賞作品のなかから、記憶に残る魅力的な作品を厳選。

定価:本体2,300円+税