再評価される天才数学者 ミゾホオズキの花びら、模様の謎

戦中の大数学者の数理モデルが、花びらのパターンの仕組み解明をあと押し

2020.05.15
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花弁に独特のパターンがあるミゾホオズキの一種ミムルス・ピクトゥス(Mimulus pictus)。(PHOTOGRAPH BY ANDRIA LO, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 ミゾホオズキを研究する学者なら、花がこちらを見つめ返しているように感じることがある。この花は、サルの顔のようにも見えることから、英語圏では「モンキーフラワー」と呼ばれる。花の中央の斑点がある部分はまるで大きな口のようにも見え、蜜を目当てにやって来るハチには格好の目印だ。

「昆虫たちに『安全だからこっちへおいで』と呼びかける人懐っこい笑顔のようにも見えます」と話すのは、米カリフォルニア大学バークレー校の植物生物学者ベンジャミン・ブラックマン氏。斑点のある花びら(花弁)は、受粉を担ってくれる昆虫を惹きつけることで、子孫の繁栄に貢献しているわけだ。

ギャラリー:数理モデルが解き明かす、花びらの模様 写真8点(画像クリックでギャラリーへ)
ミゾホオズキの多種多様な花。見た目や色は違っても、同じアルゴリズムで生み出されている(PHOTOGRAPH BY ANDRIA LO, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「色の対比は、より効率的かつ効果的な受粉を実現しています」と、米コネチカット大学の生物学者ヤオウ・ユアン氏は説明する。

 10年にわたりミゾホオズキの研究に取り組んできたユアン氏にとって、斑点のある花弁は、単に昆虫を喜ばせるものというだけではない。生物界全体に見られるパターンの一例であるというのだ。貝殻に等間隔で刻まれる細い溝、シマウマの体に走る縞など、自然界で見られるパターンは、実は同じ進化の仕組みから生み出されたものかもしれない。

 最新の研究で、ユアン氏らは、ミゾホオズキの花弁に描かれた斑は、わずか2種類のタンパク質の間の「争いの結果」生じたものであることを明らかにした。一つひとつの植物細胞が持つ色素の制御をめぐって争うこれらの遺伝子は、単一の種であっても、その中に豊富な多様性を生み出せることを意味する。

 この発見は、大戦時代に活躍した英国の数学者アラン・チューリングが提唱した数十年前の理論の正しさを証明したとも言える。チューリングは、自然界に見られる不思議な模様の多くに「共通のテンプレートがある」と主張していたからだ。

「色素形成のパターンは複雑ですが、自然界のいたるところで見られます」と、論文の共同執筆者であるブラックマン氏は言う。「この研究は、比較的単純なシステムが、こうした複雑さを生み出すことができる可能性を示しています」

ミムルス・クプレウス(Mimulus cupreus)とミムルス・ウァリエガトゥス(Mimulus variegatus)の交配種。(PHOTOGRAPH BY ANDRIA LO, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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ミムルス・ウェルベナケウス(Mimulus verbenaceus)。(PHOTOGRAPH BY ANDRIA LO, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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