どん底の世界恐慌に立ち向かった、大統領ルーズベルトの決断

歴史の中の「逆境を跳ね返した決断」(4):フランクリン・D・ルーズベルト

2020.05.23
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第一次ニューディール

 ルーズベルトは手始めに国内のあらゆる銀行を一時閉鎖させ、その間に緊急銀行救済法を提出した。これは銀行の倒産という最も切迫した問題を打開するための法案だった。銀行の破綻を恐れた人々が預金を全額引き出したため、結果的に銀行が破綻に追い込まれる事態が各地で起こっていた。

 ルーズベルトは国民に政策を説明し、そのなかで銀行の閉鎖を「バンク・ホリデー(銀行の休業日)」と形容した。このいわゆる「炉辺談話」は定期的におこなわれるようになる。3月9日に連邦議会へ提出された銀行法案は、1回しか目を通されないまま、その日のうちに議会を通過。これにより、連邦準備銀行を通じて公認銀行への無制限貸付が可能となり、実質的に全預金が保証された。銀行が4日後に営業を再開したとき、外には人々が列を作っていたが、その多くは、以前引き出した金を預け直そうとする人たちだった。マットレスの下に隠しておくよりも、銀行に預けるほうがずっと安全になったからだ。

炉辺談話 1934年9月30日、有名な「炉辺談話」をおこなうルーズベルト。アメリカの経済状況を国民に説明した。(credit: Everett Collection/Mary Evans)
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 銀行法に続いて、農業、工業、住宅、労働に関する法律が次から次へと制定される。また、酒類の製造販売を禁じる禁酒法が廃止されたが、この措置はアメリカ国民に大いに歓迎され、税収増加にもつながった。すべての新法が銀行改革ほど成功を収めたわけではないが、ニューディール政策は全般的にうまくいっているようだった。そしてアメリカ経済は、3年間苦しんだ大恐慌から徐々に脱却していった。

有言実行の人

 結果的にアメリカの大恐慌は1933年3月に底を打った。ルーズベルトが最初の2年間に取り組んだ「第一次ニューディール」の最大の功績は、アメリカの一般大衆に自信を取り戻させ、仕事や家を失う不安なしに暮らしていける状況を作ったことにある。

 国の直面する問題の大きさにひるんだような印象を与えたフーバーとは対照的に、ルーズベルトは、アメリカ経済を再び動かして雇用を増やすために必要なことはなんでもする「有言実行の人」として、国民の目に映った。銀行や企業は通常業務に戻り始め、産業は持ち直し、大量に解雇していた従業員の一部を再雇用し始めた。大恐慌が終わったわけでは決してなかったが、多くの人々が、以前よりも明るい未来を思い描けるようになっていた。

第二次ニューディール
最初の2年間に成し遂げた成功を足場として、ルーズベルトはいわゆる「第二次ニューディール」に着手する。差し迫った多種多様な社会問題に取り組むべく、1936年から1938年にかけて、さまざまな法案を提出した。しかし、最初に導入した経済施策に比べて、健康保険や社会保障といった社会問題に連邦政府が関与することは、はるかに大きな物議を呼んだ(アメリカではいつものことなのだが)。この試みは、改革支持のリベラル派と絶対反対の保守派との対立を再燃させた。これはオバマ大統領がおこなった医療保険制度改革を巡る状況にも似ている。

まだ不十分?

 ニューディールに対しては、その最初の導入以来、同じような批判が繰り返されてきた。「国民生活に国が関与する可能性をルーズベルトが広げすぎた」とする意見がある一方、「ルーズベルトのやり方は不十分であり、多くのヨーロッパ諸国で採用されている包括的な社会的施策を導入すべきだった」とする向きもある。

 しかし、ニューディールの結果がどのように評価されようと、アメリカ史上、いや世界史上最も深刻で、最も破壊的な不況に立ち向かうべく、直接的な行動を起こそうと決めたルーズベルトの決断は、間違いなく、アメリカ史上最善の政治的判断の1つだったはずだ。

 ルーズベルトのニューディールの効果は、最初の導入時から数十年にわたって続いた。今なお有効な計画もある。ニューディールはまた、アメリカの政治に根本的な再編をもたらした。いわゆる「第五政党制」である。この制度において、リベラルな信条を持つ有権者が民主党を支持するようになり、保守的な人々は共和党を支持する傾向が見られた。この状況は今もさほど変わらない。

 ルーズベルトは史上初めて4期目に突入し、任期途中の1945年にこの世を去るまで、アメリカ大統領の職にあった。つまり、世界恐慌に対処しただけでなく、アメリカを第二次世界大戦に導いた人物でもあり、さらに大きな決断をいくつもおこなったのである。

出典:書籍『逆境だらけの人類史 英雄たちのあっぱれな決断』

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