どん底の世界恐慌に立ち向かった、大統領ルーズベルトの決断

歴史の中の「逆境を跳ね返した決断」(4):フランクリン・D・ルーズベルト

2020.05.23
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
逆境に直面した時、人々は歴史を変えるほど大きな決断を下し、劇的な大逆転を遂げてきた。そんな物語47篇を収録したナショナル ジオグラフィックの書籍『逆境だらけの人類史』から、今こそ読みたい5人の決断を紹介する。

 1932年11月の大統領選挙に向けて、民主党候補に指名されたフランクリン・D・ルーズベルトは、指名受諾演説で「ニューディール(新規まき直し)」という言葉を使った。この表現を特に強調したわけでもなければ、この表現に言外の意味を込める明確な意図もなかった。しかし、演説の数日後に新聞各紙がこの言葉を掲載し、いつしか、1930年代初頭に世界恐慌が経済や社会にもたらした壊滅的事態を収拾しようとしたアメリカの政策そのものを表すようになった。

FDR フランクリン・D・ルーズベルト(FDR)は大統領就任後すぐに、アメリカが世界恐慌から抜け出すためのニューディール政策を導入した。
[画像のクリックで拡大表示]

 この選挙戦でルーズベルトは、大統領に選ばれたら何をするつもりか具体的に明言しないばかりか、矛盾する声明を出すことさえあった。あるときは公共支出の削減を約束したかと思えば、その次には、雇用を増やすための大規模プログラムへの資金提供を約束する、といった具合である。

 実際、ルーズベルトは何を語ったにせよ勝てる状況だったかもしれない。当時の大統領ハーバート・フーバーは、1929年10月のウォール街大暴落と世界恐慌の直前までアメリカが好景気を享受していたのは自分の手柄だ、といち早く主張していた。また、この不況の責任の矛先を自分以外のあらゆるもの、あらゆる人に向けようと必死だった。そのような人物が、景気回復の舵取り役に適任だという印象を与えることは、ほとんどなかったのである。

アメリカ国民のためのニューディールを、私は皆さんにお約束し、私自身に誓います。ここにお集まりの皆さん、能力と勇気の新しい秩序の唱道者となりましょう。これは単なる政治運動ではありません。闘いへの参加の呼びかけです。票を獲得するためだけでなく、アメリカを国民の手に取り戻すこの聖戦に勝つために、どうか皆さんの力をお貸しください。

─フランクリン・D・ルーズベルトが1932年7月2日におこなった、民主党の大統領候補指名の受諾演説より

圧倒的勝利

 ルーズベルトは大統領選で圧勝を果たした。1932年11月の選挙から1933年3月の就任式までの数カ月は、新政権のメンバーを任命したり、ルーズベルトと連携して世界恐慌に取り組む道を探っていたフーバーをやり過ごすことに費やした。そして、のちに「ブレーントラスト」と呼ばれる顧問団を結成し、独自の計画を練った。

 しかし、ルーズベルトがこの時期にも、選挙戦の間もおこなわなかったことが1つある。それは、必然的に何が起こるかを明言することだ。彼は就任演説でも多くを述べなかった。ただ世界恐慌を招いた銀行家や資本家の無責任と腐敗を非難し、あの有名な言葉「われわれが恐れるべきものはただ1つ、恐れそのものだ」を言った。

 ルーズベルト自身どうすればよいのかわからないのではないかといぶかる人も多かったが、就任演説で明言した通り、語るだけの時間は終わりを告げた。「ニューディール」の中身がなんであれ、大きな決断をし、実行に移すときが来たのである。

次ページ:絶望的な貧困

おすすめ関連書籍

逆境だらけの人類史

英雄たちのあっぱれな決断

窮地に陥ったり、不遇や失敗にまみれたりした人たちが、劇的な逆転を遂げるに至る決断を47例集めた、歴史読み物。

定価:本体2,600円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加