「ウイルスが中国の研究所で作られたという科学的根拠はない」

米国コロナ対策の第一人者ファウチ氏独占インタビュー

2020.05.11
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米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長を40年近く務めるアンソニー・ファウチ氏は、エイズを含む数十件のアウトブレイクに対処してきた。そんな彼も、新型コロナウイルスの性質を異様に感じているという。(PHOTOGRAPH BY MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、米国の新型コロナ対策の「顔」と言える科学者だ。ファウチ氏は今回、ナショナル ジオグラフィックの独占インタビューに答えて、新型ウイルスが中国の研究所で作られたと考える科学的根拠はないと断言した。

 ファウチ氏は、「コウモリから見つかったウイルスと、現在猛威をふるっているウイルスの進化を見れば、これらが人為的な操作や意図的な操作を受けていないことがわかります」と言う。このウイルスは時間とともに自然界で段階的に進化し、種の壁を跳び越えたものと考えられるという見解だ。

 彼が重視しているのは、夏までに感染率を下げ、秋と冬にやってくる第二波に備えることだ。第二波が来る前に十分な数の検査キットを準備し、検査を最も必要としている人々が検査を受けられるシステムを構築することが必要である。

「このウイルスが消えることはないと思います」

「このウイルスが消えることはないと思います」とファウチ氏は言う。「ウイルスは存在しつづけ、チャンスがあれば復活するでしょう」。米国は夏の間に医療システムを強化し、病床、人工呼吸器、医療従事者のための防護服の確保に努めなければならない。

 彼はまた、各都市や各州の症例数が減少しはじめるまで、あらゆる場所で人との距離を保ち続けることの重要性を強調する。全米では4月以降、毎日2万〜3万人の新たな感染者が発生しており、高止まりの状態にある。

 それでもファウチ氏は、過去にないほど短い期間でワクチンが完成し、早ければ1月にも一般の人々に接種できるようになるだろうと考えている。

2020年4月9日(木)、ホワイトハウスでの記者会見で新型コロナウイルスについて語るトランプ大統領を見守るアンソニー・ファウチ氏と新型コロナ対策調整官デボラ・バークス博士。(PHOTOGRAPH BY ANDREW HARNIK, AP PHOTO)

 現在、ワクチン開発がいくつも進められているが、なかでもmRNAワクチンが有望とみられる結果を出しているという。mRNAワクチンは、不活化や弱毒化したウイルス本体ではなくウイルスの遺伝物質の断片を使って、体に免疫反応を引き起こすタンパク質を作らせる。

 現時点では人間への使用が認められているmRNAワクチンはないが、1980年代から90年代にかけてエイズ治療薬の開発に携わった経験をもつファウチ氏は、新型コロナウイルスを標的とするmRNAワクチンには大きな可能性があると考えている。エイズのHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の場合とは違い、新型コロナウイルスに対しては多くの人が適切な免疫反応を起こしているからだ。

 ファウチ氏はナショナル ジオグラフィックに、まだ感染率が低下していない段階で各州が経済活動の再開を急いでいることへの懸念を語った。また、新型コロナウイルス感染症について次々と発表される新しい科学的情報の扱い方や、一般市民が情報の信頼度を判断するための目安についても教えてくれた。

(インタビューは長さや読みやすさを考慮し編集を加えている)

次ページ:ワクチン開発の見込みは?

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