7年後には、直径約3kmの1990 MUという大きな小惑星が地球から約460万kmのところを通過する。
「これは、衝突されたくない大きさですね」とジョンソン氏は言う。「私たちの最も重要な仕事は、地球に近づいてくる小惑星を片っ端から見つけてカタログを作ることです。どんなものが見つかっても驚きません」
1998年、米国議会はNASAに対して、直径1km以上の潜在的に危険な小惑星の90%以上を発見して調べるように指示した。その7年後には、直径150m以上の小惑星の90%以上を見つけるようにと指示を修正した。
1998 OR2や1990 MUのような大きめの小惑星が地球に衝突した場合、生物に壊滅的な被害を及ぼす可能性がある。米パデュー大学の地球物理学者ジェイ・メロシュ氏は、「直径1km以上の小惑星が衝突した場合、1つの大陸の全体に被害が及び、大気中に舞い上がった塵により世界的な寒冷化が起こり、数年間は不作が続くでしょう」と言う。
大きめの小惑星はこれまでに約900個見つかっている。これは予想されている数の95%に相当し、今後数世紀の間に地球に衝突しそうなものは1つもない。しかし、米国の国家科学技術委員会の報告によれば、都市レベルの被害をもたらすおそれがある小さめの小惑星は、約2万5000個と予想されている総数のうちの約30%しか見つかっていない。
「小さめの小惑星については、これからです」とメインザー氏は言う。「黒々とした宇宙を背景に灰色や黒い色の岩を探すのは非常に難しいのです」
直径150m未満の小惑星であっても、非常に危険なものになりうる。地球の大気中で爆発すれば核爆弾並みの威力になる。2013年にロシアのチェリャビンスクの上空で爆発した小惑星がそうだった。小惑星の直径は20m程度だったが、超音速の火の玉となって大気中を落下する際に衝撃波を生じ、建物のガラスが割れて約1500人の負傷者を出した。これだけの被害をもたらした小惑星の接近に誰も気づいていなかったのだ。(参考記事:「ロシアの隕石、空前の規模の爆発」)
小惑星を迎え撃つ
小惑星が地球に衝突するのを阻止する上で最も重要になるのは、危険を察知するタイミングだ。準備の時間が数年から数十年あれば、大きい小惑星の軌道でも変えうるだろう。
NASAのDARTミッションでは、地球に接近してくる小惑星に、米ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所(APL)が建造する重さ500kgの宇宙船を衝突させる実験を行う。2021年7月に打ち上げられる予定の冷蔵庫サイズの宇宙船は、2022年10月、地球から約1100万km離れたところで直径約780mの小惑星ディディモスに接近する。ディディモスのまわりには「ディディムーン」と呼ばれる直径約160mの小惑星が周回している。
DARTの標的は、小さい方のディディムーンだ。この大きさでも、地球に衝突すれば都市を消滅させるおそれがある。ディディムーンの周回時間の変化は地上の望遠鏡でも測定することができ、これにより宇宙船衝突の影響を見積もることができる。
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