心理学者が注目 人は自宅待機にどこまで適応できる?

新型コロナ禍で長期間の自宅待機を余儀なくされる人々 メンタルヘルスに懸念も

2020.04.23
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イタリアのミラノで自宅待機する写真家カミラ・フェラーリ氏のセルフポートレート。自宅待機が人々の精神的な健康にどのような影響を与えるのか、心理学者たちは研究を始めている。(PHOTOGRAPH BY CAMILLA FERRARI)
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 新型コロナウイルスの世界的大流行を受け、国によっては外出禁止令が出された。ほぼ一夜にして数億人もの人々が、孤独と闘いながら他者とつながる方法を模索しなければならなくなっている。長期にわたる自宅への「隔離」は、心にどのような影響を与えるのだろうか。

 うつ病、麻薬乱用、家庭内暴力。一部の人々が受けている心理的影響の結果を、社会科学者たちは危機感をもって見守っている。米カイザーファミリー財団の世論調査では、45%の米国人がコロナウイルスの流行で精神的なダメージを受けたと回答した。タバコやアルコールの売上も上昇した。銃もよく売れているという。

 私が暮らすワシントン州シアトルは、米国で最初の新型コロナウイルス感染者が報告された都市だ。そのシアトルで現在実施されている500人の追跡調査を見ると、少なくとも今のところは、この状況にうまく対応できている人が多いようだ。

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 シアトルがあるキング郡は、米国でいち早く「社会的距離」政策を採用した。調査は、被験者が自分の携帯電話やノートパソコンから毎晩ログインしてオンラインアンケートに回答する形で実施されている。アンケートの質問内容は、今日は何時間人と交流したか、自分は誰かに気にかけてもらっていると感じるか、人とのつながりを感じるか、人とのつながりを積極的に求めたか、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して考えないようにすることはどのくらい難しかったか、などだ。これまでの結果を見ると、今のところ、人々はうまく適応できているようだ。

 この調査を率いるワシントン大学大学院生のアダム・クチンスキー氏は、調査開始から1カ月近くが経過し、「人々の回復力や適応力について少しずつ分かってきました」と語る。「当初は、意図しなくても頭に突然、不愉快なことを思い浮かべてしまう、いわゆる『侵入思考』によく悩まされるという回答が多かったのですが、最近は減少傾向にあります」

 今も続く自宅待機で私たちが、どう変わるのかを判断するのはまだ早い。人間は生きるためにお互いの存在を必要とするので、極端な孤立は、免疫力を弱め、血圧を上げ、がん細胞を増殖させることすらある。長期的に、人との接触を断つということは、喫煙と同じくらい不健康なことと言えよう。

 社会的つながりは、体に良いだけではない。米ノートルダム大学の人類学者アグスティン・フエンテス氏は、人間は一緒に問題を解決するように進化してきたと話す。私たちの祖先は、チームワークによって石器を作り、芸術を通してものの見方を共有するために、糊や染料を生み出した。私たちを人間たらしめるものの中心にあるのが「人と人とのつながり」である。「それが私たちを生かし続けているのです」と、フエンテス氏は言う。

参考ギャラリー:新型コロナ、都市封鎖したイタリア、ミラノの隔離生活 写真12点(画像クリックでギャラリーへ)
レベッカ・カサーレさんの家は繁華街にあり、毎晩のように近くのバーから通りへ人があふれ出ていた。それが、今は不気味なほど静まり返っている。外出禁止令が出されたとき、家にはカサーレさんしかいなかった。他の4人のルームメートは、別の待機場所を探さなければならなかったという。「孤独に押しつぶされそうです。ここではいつも色々なことが起こっていたので。物音が何一つしない空っぽの空間を見ていると、全てが非現実的に思えてきます」(PHOTOGRAPH BY GABRIELE GALIMBERTI, NATIONAL GEOGRAPHIC)

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