先日、シンガポールの複数の教会でクラスター感染が発生したが、その際、謎を解く鍵になったのもこの検査だった。ELISA検査は、新型コロナ感染症と診断されていなかった2人の軽症者が、2つの小規模なクラスター感染を仲介していたことを明らかにした。この2人が自覚のないまま1つの教会から別の教会へと感染を広めたことで、最終的に20人以上が感染することになったのだ。

「ELISA検査は半日で終わります」と、このクラスター感染の連鎖を特定した抗体検査を開発したデューク-NUS医学系大学院のウイルス学者ダニエル・アンダーソン氏は語る。「迅速で、精度も高く、ウイルスを取り扱うわけではないので封じ込めの必要もありません」

 ELISA検査を行うには、多数の小さなくぼみが並んだプラスチック皿(マイクロウェルプレート)にウイルスのタンパク質を吸着させて、患者の血液サンプルを加える。血液サンプル中にこのウイルスに対する抗体が含まれていれば、ウイルスタンパク質と結合し、色が変わる化学反応が始まる。

 ただし、抗体検査が威力を発揮するのは感染症が進行してからだと、米メイヨークリニック感染症血清学研究所のエリツァ・シール所長は言う。実際に感染していても、タイミングが早すぎるとまだ抗体ができておらず、偽陰性の結果が出てしまうことがある。中国での最近の研究によると、新型コロナウイルス陽性患者の血液中の抗体が検出可能な濃度になるには11〜14日かかるという。

「正しい結果を得るためにはタイミングが肝心です」とシール氏は言う。

 コロナ対策として米国食品医薬品局(FDA)が規制を緩和したため、多くの研究室が抗体検査の開発に取り組んでいる。FDAは4月2日に最初の市販用抗体検査キットを承認し、キットを開発する研究室や企業のリストも公開している。

パンデミックの範囲を特定する

 見えないコロナ感染の広がりを追跡するには、十分な数の検査を行うことが重要になる。疫学者は、米国なら人口のごく一部、おそらく1%程度を無作為に抽出して検査をすれば、パンデミックの範囲を特定できるだろうと言っている。

「感染者の割合を正確に把握できれば、より具体的な提言ができます」と、米ノースイースタン大学新興感染症研究室を運営するサミュエル・スカルピーノ氏は語る。

 感染の範囲を特定する努力はすでに始まっている。イタリア当局は隔離下にある人口3000人の自治体ヴォーの全住民の検査を行い、約半数の感染者が無症状だったことを明らかにした。米国コロラド州テルライドでは、バイオテクノロジー企業「ユナイテッド・バイオメディカル」が全住民8000人に抗体検査を実施している。

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