2020年1月1日に閉鎖された武漢華南海鮮卸売市場。中国の公衆衛生当局によれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初期症例のほとんどがここで発生しているという。農産物や海産物だけでなく、食肉加工された野生動物も販売していた。市場は現在も閉鎖されている。(PHOTOGRAPH BY HECTOR RETAMAL, AFP/GETTY)
2020年1月1日に閉鎖された武漢華南海鮮卸売市場。中国の公衆衛生当局によれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初期症例のほとんどがここで発生しているという。農産物や海産物だけでなく、食肉加工された野生動物も販売していた。市場は現在も閉鎖されている。(PHOTOGRAPH BY HECTOR RETAMAL, AFP/GETTY)
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中国のウェットマーケットは閉鎖されたままか?

 COVID-19のパンデミック以降、「ウェットマーケット」と「ワイルドライフマーケット」の混同は混乱を引き起こしており、米国の指導者層が中国のウェットマーケットの閉鎖を求め、営業を認める中国を厳しく非難する事態にまで発展している。

 中国がウェットマーケットを閉鎖しないのにも理由はある。ウェットマーケットは、市民にとって手ごろな価格で食品を購入できる場所であり、そこで商売をする人々にとっても重要な収入源となっているからだ。

 一方で中国政府は、2020年1月26日、野生動物の食品としての取引を禁止した。華南海鮮卸売市場はCOVID-19の初期症例の発生源である可能性が高いとされ、既に1月1日、中国政府は市場の一時閉鎖に踏み切っていた。野生生物取引を監視するTRAFFICの中国支部ディレクター、シュー・リン氏によれば、華南海鮮卸売市場は現在も閉鎖しているという。

 中国では、都市封鎖の解除が始まっており、国内のほかのウェットマーケットは営業を再開していると伝えられている。ただし、野生動物とその肉は扱っていないようだ。 (参考記事:「新型肺炎、武漢から580キロの町が機能不全の実態」

野生動物の食用は、なぜ病気を広める?

 人間と野生動物との密接な関わりはエボラウイルス病(エボラ出血熱)、HIVによるAIDSなど、さまざまな病気のアウトブレイク(集団発生)を引き起こしてきた。 (参考記事:「すでに数千人が発症か、中国の新型肺炎、疫学者らが発表」

 野生動物を食品として売買したり解体したりするのも、動物から人に病気が感染する1つの経路だ。市場で取り引きされる野生動物が病気だったり、不潔で窮屈な環境に置かれていたりすると、ウイルスは容易に拡大する。しかも、動物たちが閉じ込められている状況下では、病原体であるウイルスは互いに交じり合い、遺伝子コードの断片をやりとりして、種間でも感染しやすい形に変異する可能性もある。COVID-19のような呼吸器疾患の場合、食用の野生動物を扱う人や買った人が、動物の体液にさらされればウイルスは人体に侵入するのだ。

 エキゾチックアニマル、伝統薬、じゅうたんや彫刻といった装飾品など、別の形で野生動物を取引することもリスクを伴う。こうした目的に使用する動物がウイルスを持っていて、加工者や販売者、購入者が病気にかかることもある。例えば、2007年8月に、米コネティカット州のドラム製作者とその息子が炭疽(たんそ)症に感染した。これはギニアから輸入したヤギ皮によって、自宅と職場が汚染されたことが原因だった。自然界に存在する炭疽菌の胞子がヤギの皮に付着していたものと思われる。野生動物をペットとして飼って病気になることもある。カメはサルモネラ菌をもっていることがある。

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