自閉症の兆候を早く見つける

生後3カ月でリスク予測ができる可能性が出てきた

2020.05.01
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米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のジョゼフ・ピベンの研究室で、脳スキャンを受ける生後10カ月のアネッサ。母親のアリア・アーマーが娘をそっとなでる。アネッサは兄が自閉症なので、発症リスクが高い。こうした乳児の脳を定期的に調べ、その変化を検出すれば、早期の診断につながる可能性があると、ピベンらは考えている。(PHOTOGRAPHS BY LYNN JOHNSON)
この記事は、雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版 2020年5月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

自閉症になる子どもは、脳の成長が早すぎることがわかってきた。この発見は障害の予防や軽減につながりそうだ。

 わが子が自閉症と診断されれば、たいがいの親はショックを受ける。健康そのものなのに、どうしてこうなったのか……。その答えはまだ解明されていないが、自閉症の子どもの脳で起きていることは徐々にわかってきている。

 症状が表れるよりもずっと前、早ければ生後3カ月で、自閉症の兆候を検出できる可能性が出てきた。早期に手を打てば、自閉症に伴う機能障害の予防や軽減ができるかもしれない。

「自閉症は特性であって、それが障害になるかどうかは初期の体験にかかっていることがわかってきました」と米エモリー大学の心理学者アミ・クリンは話す。こうした研究によって、「深刻な障害としての自閉症を避けられる」可能性が出てきたというのだ。

 自閉症に関連のある遺伝子はいくつも特定されている。その一部は親から受け継いだ遺伝子だが、それ以外に新たに変異した遺伝子もある。親が高齢であるなど、発症に関わるほかの要因も見つかっている。麻疹(はしか)、おたふくかぜ、風疹の3種混合ワクチンの小児への投与と自閉症を関連づけた論文は、データの不正操作が発覚して撤回された。

 1990年代後半以降、自閉症の有病率は増え続けている。診断技術が向上したためでもあるが、生物学的要因や環境要因などにより、実質的に増えている可能性も排除できないと、研究者はみている。

 自閉症の原因については確立された理論はないとはいえ、発症に至る過程はかなり明らかになってきた。

 米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の精神医学者ジョゼフ・ピベンらは、兄か姉が自閉症で、自閉症の発症リスクが高いと考えられる乳児106人を対象に研究を行った。生後6カ月、12カ月、24カ月の3回にわたって磁気共鳴画像装置(MRI)で脳を調べたところ、その後に自閉症を発症した子どもの脳は、生後6カ月以降、ほかの子どもたちよりも急速に大きくなり、生後12カ月では脳の表面積がより大きく、2歳では脳の容積も大きくなることがわかったと、ピベンらは2017年の論文で報告している。

次ページ:発症前の予防的な介入がカギに

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