ジンベエザメは100歳まで生きるかもしれない、研究

冷戦時代の核実験を手がかりに寿命推定が精緻に

2020.04.09
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ユカタン半島沖を泳ぐジンベエザメ。体重は最大22トンほどになると考えられている。(PHOTOGRAPH BY BRIAN J. SKERRY, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 体長が最大18メートルにもなるジンベエザメは、海に暮らす世界最大の魚類だ。白い斑点と縞模様の美しさも、海中でひときわ目を引く。世界中の温暖な海に生息し、エコツーリズムでも人気が高いジンベエザメだが、その生態はまだわからないことだらけだ。実際、その寿命すらよくわかっていない。

 最近の研究では、サメの仲間の驚くべき寿命が明らかになっている。たとえば、ニシオンデンザメは300年以上生きるという。これは地球上の脊椎動物の寿命としては最長だ。(参考記事:「約400歳のサメが見つかる、脊椎動物で最も長寿」

 このような発見が可能になった背景には、サメの年齢を計測する方法の発達がある。たとえば、サメの骨格に含まれる炭素の希少な放射性同位体「炭素14」を追跡する方法だ。冷戦時代の核実験の副産物である炭素14の量を測定すれば、これまでの方法よりも正確に年齢を知ることができる。サメのような軟骨魚類では、脊椎の骨にできる年輪のような「輪紋」を数えて年齢を推定するが、これまでは一つの輪紋がどのくらいの時間を表すのかははっきりしていなかった。(参考記事:「サメの寿命、通説より数十年長かったと判明」

 今回、研究チームは放射性炭素による年代測定を用いることで、あるジンベエザメの死骸が50歳まで生きたことを確認、4月6日付けの学術誌「Frontiers in Marine Science」に論文を掲載した。この手法で特定したジンベエザメでは、これが最高年齢だ。

「この巨大なサメの仲間は、100歳くらいまで生きることができるかもしれません」と、研究を率いたオーストラリア海洋科学研究所の魚類生物学者マーク・ミーカン氏は語る。

 今回の研究についてミーカン氏は、危機に瀕しているジンベエザメを守るうえで非常に重要だと訴える。ジンベエザメの寿命は長いため、漁業や海水温の上昇、船との衝突といった脅威に対し影響を受けやすいことが懸念されるからだ。

炭素を使って年齢データを解読

 1955年から1963年にかけて、米国などの核実験により、地球の大気中に含まれる炭素14の量が倍増した。その一部は海水に吸収され、食物連鎖網に存在するすべてのものに取り込まれた。ジンベエザメの軟骨性の脊椎骨もその一つだ。

 脊椎骨には、成長に伴って次々と輪紋が形成される。ある期間の海水中の炭素14の量と、輪紋に取り込まれた炭素14の量を比べることで、サメの年齢を特定することができる。

次ページ:成長が遅い生物は絶滅しやすい

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