同様の研究についての論文は3月末にも発表された。ただし、査読はまだ完了していない。それによると、イヌ、ブタ、ニワトリ、アヒルではウイルスが十分に増殖できない一方、フェレットとネコではできており、ネコの呼吸器飛沫を介してウイルスが拡散する可能性があることがわかった。ただし、これは実験室での結果であり、実世界でもそうなるとは限らないとワン氏は注意を促す。

 自然環境にいる動物で確かめることも、同じくらい重要だとバリック氏は話す。「コロナウイルスは頻繁に宿主を変えます。究極的には、野外で野生生物の調査をしなければなりません」

 しかし、このような研究は非常に難しいとワン氏は言う。そのため、現在行われている野生調査のほとんどが、これから宿主になるかもしれない種ではなく、実際に最初にウイルスを拡散した可能性がある種の発見に力を注いでいる。

人間から動物への感染を監視せよ

 新型コロナウイルスに感染しうるとわかった動物の中でも、人間と長時間一緒に過ごす動物は感染する可能性が高いと言うのは、非営利団体エコヘルス・アライアンスの代表で疾病生態学者のピーター・ダシャック氏だ。氏が参加したウイルス動態調査チームは2017年、コウモリが生息する中国南部の洞窟でSARSに類似する複数のコロナウイルスが見つかったと警告している。人間と共存する時間が長ければ、それだけウイルスが人間から動物にうつる機会も増えるとダシャック氏は指摘する。

ギャラリー:ちょっと変わった「エキゾチック・ペット」の写真10選(写真クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:ちょっと変わった「エキゾチック・ペット」の写真10選(写真クリックでギャラリーページへ)
最初の1匹を肝不全で亡くした後、メラニー・ティパルドス氏が購入した2匹目のカピバラ「ガリバルディ・ルース」。テキサス州に住む彼女は、ベネズエラで野生のカピバラを見て以来、この巨大なげっ歯類に夢中になった。カピバラは飼育下ではあまり長生きしない傾向にある。(PHOTOGRAPH BY VINCENT J. MUSI, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 ウイルスが新たな動物種にうつったとしても、そこで定着するとは限らないとウイルス学者らは言う。ある動物が、新たな宿主になるだけでなく、そのウイルスを再び人間にうつすようになるには、いくつもの要素がぴたりとはまる必要がある。

 もしも新型コロナウイルスが家畜に感染し、重い病気や大量死をもたらすことになれば、人々はウイルスの感染に気づいて家畜での拡大はいずれ阻止されるだろう。だが、ウイルスが動物に感染しても、下痢などのよくある症状しか起こらなかったり、まったく何の症状も現れなかったりすれば、ウイルスは気づかれないうちに拡散してしまう。その後は、二度と人間には戻ってこないかもしれないし、ほんの数カ月のうちに人間に再度感染し、新たな集団感染を引き起こすかもしれない。

 ダシャック氏によれば、最良の監視方法は、主要な種について戦略的に検査を行い、ウイルスに対する抗体ができていないかを確かめることだ。抗体が見つかれば、その個体がウイルスに感染して打ち勝ったしるしだ。アイルランド、ダブリン大学トリニティ・カレッジの免疫学者ルーク・オニール氏は、抗体検査は安価で簡単だと言う。「まるで妊娠検査のように手軽です。血液が1滴あれば、ほんの数分で抗体の有無がわかります」

「新型コロナウイルスが人間から動物に感染する確率は高くありません」とダシャック氏。しかし、と深く考え込むように言った。「そもそもこのウイルスが出現したこと自体、確率は低かったのです」

会員向け記事を春の登録キャンペーンで開放中です。会員登録(無料で、最新記事などメールでお届けします。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 動物の箱舟

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

世界の動物園・保護施設で飼育されている生物をすべて一人で撮影しようという壮大な挑戦!

定価:3,960円(税込)

文=Anthony King/訳=山内百合子