トイレットペーパーがない時代、人々はどうやって尻を拭いたのか?

新型コロナのパニックで売り切れ続出、今こそ知りたい「尻拭い」の歴史

2020.04.18
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トイレットペーパーの大量生産は米国では1857年に始まったが、古代より様々な方法が世界中で用いられてきた。(PHOTOGRAPH BY HANNAH WHITAKER)
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 新型コロナによるパニックで、トイレットペーパーの買い占めが起きている。スーパーや薬局へ買いに走る時、あなたは何を思うだろうか。いつでも買えたあの頃を思い出すかもしれないし、トイレットペーパーがなかった時代に人々は何を使ってお尻を拭いていたのだろうと思いをはせるかもしれない。

 現在、世界の何億人かは、トイレットペーパーがないからといって困ることはない。紙を使う代わりに、水で洗うからだ。しかし、昔から世界の人々は様々な方法で尻を拭い、考古学者や人類学者はその歴史を解き明かしてきた。世界の「尻拭い」の例を紹介しよう。

古代ローマのスポンジ棒

 古代ローマの公衆トイレでは「テルソリウム」を使って尻を拭いていた可能性がある。この古代の道具は、棒にスポンジを付けたもので、酢や塩水に浸して使った。テルソリウムは、様々な古代ローマの文献で言及されている。なかでも、哲学者セネカが役人ルキリウスに宛てた手紙の一節は、一度聞くと忘れられない。それはゲルマン人グラディエーター(剣闘士)の自殺に関する一節で、闘技場で動物に殺されるかわりに、「最も不潔な用途専用」のスポンジが付いた棒を喉に押し込んだという。

現代に作られたテルソリウムのレプリカ。史料によると、古代ローマ人は、テルソリウムと呼ばれるスポンジが先端に付いた棒を使っていた。しかし、これを使ってきれいにしていたのが、トイレの設備なのか、トイレの使用者なのかは、考古学者の間でもはっきりしていない。(PHOTOGRAPH BY D. HERDEMERTEN, WIKIMEDIA COMMONS)
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 テルソリウムは当時の公衆トイレで共用されたと考えられる。足元にある小さな溝には水が絶えず流れ、テルソリウムを浸していただろう。だが、保存状態の良いテルソリウムは、これまで見つかっていない。「問題は、これを使ってきれいにしていたのが自分自身か便器かということです」と、米ペンシルベニア大学考古学・人類学博物館の博士研究員の考古学者ジェニファー・ベイツ氏は話す。(参考記事:「古代ローマにトイレ税、世界5つのヘンな税」

 このスポンジ付きの棒に関する論争は、考古学者の間でもまだ決着していない。しかし、古代ギリシャや古代ローマにおけるトイレットペーパーに相当する「ペッソイ」の実物は、見つかっている。ペッソイは、楕円形や円形をした陶器の破片あるいは小石で、古代ローマや古代ギリシャのトイレの遺跡で発見された。男がしゃがんでペッソイを使う様子が、2700年前のカップにも描かれている。また、ペッソイは、ユダヤ教の聖典タルムードにも載っている。

古代ギリシャや古代ローマで使われていたペッソイと呼ばれる陶器の破片。シチリア島(左)とクレタ島(右)の古代ローマのトイレから、2000年近く前のペッソイが発掘された。(PHOTOGRAPH BY PHILIPPE CHARLIER, LUC VALÈRE CODJO BRUN, CLARISSE PRÊTRE, ISABELLE HUYNH-CHARLIER)
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 トイレットペーパーが誕生する前の独創的な道具は、他の地域でも見つかっている。1992年、中国北西部にある古代シルクロードのかつての休憩所跡では、2000年前に使われた尻拭き棒が発掘された。

次ページ:中国の尻拭き棒「籌木(ちゅうぎ)」

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