驚きの特殊能力、「社会的距離」をとって感染を防ぐ動物たち

自ら“死のフェロモン”を発するミツバチも、だが人間も負けていない

2020.03.27
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チンパンジーは病気をもっていることが明らかな仲間を攻撃し、群れから追放する。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が深刻になるなか、多くの人々が他者との接触を避けたり、自宅にとどまったりすることを余儀なくされている。米国でも、感染の拡大を減速させるため、人と人とが「社会的距離」をとるようにという指針が発表されている。

 しかし、感染症が当たり前の自然界では、「社会的距離」をとる戦略はとりたてて新しい概念ではない。事実、いくつかの社会的な種は、病原体に感染した仲間をコミュニティーから追放する。(参考記事:「新型コロナ、ことごとくパニックに陥る理由と対策」

 それは決して簡単なことではない、と自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーバンシーの首席研究員ジョセフ・キーセッカー氏は言う。感染症にかかった個体は必ずしも「見てわかりやすい」わけではないからだ。

 しかし、動物たちのなかには、特殊な感覚によって特定の病気を発見し、病気にならないように行動を変えるものがいる。しかも、明らかな症状が現れる前に気付ける場合すらある。

 例えば、ミツバチは病気の個体を容赦なく追い払う。(参考記事:「ミツバチの病気、マルハナバチにも蔓延」

 ミツバチの場合、アメリカ腐蛆病(ふそびょう)のような細菌性疾患は特に破壊的で、コロニーの幼虫が感染すると体内から液化してしまう。「アメリカ腐蛆病はその名の通り、幼虫が腐る病気です。死亡した幼虫は茶色く糸を引き、ひどい悪臭を放ちます」と、米ノースカロライナ州立大学昆虫学植物病理学部の博士研究員アリソン・マカフィー氏は説明する。

 氏の研究によれば、感染した幼虫は、オレイン酸、ベータオシメンといった“死のフェロモン”を放出するという。成虫たちはそのにおいに気付くと、文字通り、病気の個体を巣から放り出すとマカフィー氏は話す。

 この進化的適応によって、コロニーの健康が守られているため、養蜂家や研究者は数十年にわたり、この行動が受け継がれるよう品種改良を行ってきた。現在の米国を飛び回っているのは、品種改良された「衛生的」なミツバチだ。(参考記事:「ケニアのミツバチ、致死病原体に負けず」

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