未来を探す米国横断EVの旅

2070年、化石燃料を使わない暮らしは実現できているのか

2020.04.03
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テキサス州アマリロにあるキャンプ場。展示されている往年のキャデラックが、雨にぬれていた。自動車はこの100年、米国文化の象徴だったが、世界で10億台を優に超す車が気候変動の一大要因となっている今、車文化の見直しが必要だ。(PHOTOGRAPHS BY DAVID GUTTENFELDER)

2070年には、化石燃料を使わない暮らしが実現できているのか。その答えを求め、記者と写真家が電気自動車(EV)に乗り込んで、米国を横断する旅に挑んだ。

 太平洋に臨む遊歩道。その上で観覧車が回っている。動力は太陽光が生み出した電気だ。そこから100メートルほど先に、米国の旧国道66号線「ルート66」の終点を示す標識がある。ここ南カリフォルニアのサンタモニカ・ピアはグリーンエネルギーと自動車の歴史が出合う場所。電気自動車(EV)で米国を横断する旅の出発点にいかにもふさわしい。

太陽光発電で動く観覧車が立つ南カリフォルニアのサンタモニカ・ピア。米国の旧国道、ルート66でシカゴと結ばれている。1893年のシカゴ万国博覧会では、世界初の電動式の観覧車が登場した。(PHOTOGRAPHS BY DAVID GUTTENFELDER)

 ルート66は米国でいち早く舗装されたハイウェーの一つで、シカゴを起点とする。1930年代から、州間高速道路の登場でその役目を終えるまで、中西部からカリフォルニア州の光あふれる沿岸部へと、新天地を目指して移動する何百万もの人々に利用されてきた。この道路ができたおかげで、のどかな田舎だったカリフォルニア州は、無秩序に拡大するいくつもの都市が連なる地域へと変貌した。

 人々の生活を変える自動車の力や、ハイウェーを走る開放感、そしてその二つを満喫できるドライブの旅など、さまざまなものを象徴するようになったルート66。今でも古き良き米国文化に憧れる旅行者は全長3600キロのこの旧国道を車で走破すると、サンタモニカ・ピアにある小屋に立ち寄る。記念に署名入りの完走証をもらうためだ。

 今や車なしの生活など考えられないが、人々のそんな暮らしぶりが生み出した今の世界をじっくり見つめるためにも、サンタモニカ・ピアはふさわしい場所だ。

 サンタモニカの東には、700万台ものガソリン車が行き交うロサンゼルスがある。この都市の車の二酸化炭素(CO2)排出量は、米国の十数の州よりも多い。南に向かえば、そこはベニスビーチ。1940年代には石油の掘削装置が立ち並んでいたが、近年では飢えたアシカを浜辺でたびたび目にするようになった。気候変動で「海洋熱波」と呼ばれる海水温の異常な上昇が多発しているためだ。西にはマリブの街並みが、北にはそれを見下ろす丘陵地帯が広がっている。ここでは何年も干ばつと猛暑が続いた末に、2018年11月に大規模な山火事が発生した。

 このときは「サンタアナ風」と呼ばれる局地風が吹き荒れた。「火の手はあっという間に広がり、1日で海岸まで達しました」。観覧車の下でそう話してくれたのは、ディーン・クバニという男性だ。サンタモニカ市の職員を25年間務め、「持続可能性主任担当官」の職務を最後に最近退職したクバニは、海岸から山火事を見ていたという。「通常なら山火事シーズンは9月か10月までですが、雨が降らず、気温も下がらないので」長引くようになったと話す。

 今から半世紀後の2070年に世界はどうなっているだろう。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今後50年以内に温室効果ガスの排出をゼロにしなければ、気候変動の壊滅的な影響は避けられないと警告している。だが現状では、世界の化石燃料生産はむしろ増えている。米国はすでに石油と天然ガスの産出量で世界最大を誇っているが、2030年をめどに30%の増産を計画している。米国のトランプ政権は、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した。

次ページ:コストが下がった太陽光発電

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