地球が再生する理由

2070年はどうなっている? ノンフィクション作家が描く楽観的な未来像

2020.04.03
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愛情を込めて動物たちを守る
ケニアのレテティ・ゾウ・サンクチュアリで、親のいない子ゾウを飼育員があやす。ここは、地域住民が管理するアフリカで最初のゾウ保護施設で、これまでに6頭のみなし子ゾウを野生の群れに合流させてきた。(Photograph by AMI VITALE)

2070年、生活は様変わりし、気温も高くなる。それでも私たちは炭素の排出を抑え、自然と共存しながら繁栄する方法を見つけると、ノンフィクション作家が前向きな未来を描いた。

 長い茶色の髪を真ん中で分けた母は、友人たちと笑いながら、薄緑のドレスにユーカリの実を縫いつけていた。そのとき母は19歳だった。

 1970年2月。第1回アースデイの数カ月前に、米国カリフォルニア州にあるサンノゼ州立大学の学生たちが「サバイバル・フェア」なる催しを開き、そこで新車のフォード・マベリックを埋葬することにした。燃焼機関が出す汚染物質が、世界中の都市に垂れ込めるスモッグの原因であるとして、車に死を宣告したのだ。

 サンフランシスコ・クロニクル紙のポール・エイブリー記者はその様子をこう書いている。「3人の聖職者、マーチングバンド、緑のドレスを死に装束のようにまとった女子学生たちとともに、マベリックは参加者に押されて、サンノゼの中心街を粛々と行進していった」

アースデイに先駆けて
1970年2月、米国カリフォルニア州にあるサンノゼ州立大学の学生たちがフォード・マベリックの新車を購入し、深さ4メートル弱の穴に埋めた。スモッグ汚染への抗議活動だ。これがきっかけで、同大学には環境問題を扱う学科が米国でいち早く誕生した。(PHOTOGRAPHS BY STAN CREIGHTON, SAN FRANCISCO CHRONICLE/POLARIS)

「人類は必要に迫られると本腰を入れる」

 母は50年たっても、ドレスのことをよく覚えている。学生たちは水質汚染や人口過剰、大気汚染を憂えていたが、母は楽観的だった。「人類は必要に迫られると本腰を入れる」と信じていたのだ。ある意味それは正しかった。大気汚染を取り締まる法律のおかげで、米国では自動車が排出する汚染物質はあの頃より99%も少なくなった。

 娘の私は茶色の髪も裁縫の腕前も受け継がなかった。41歳の今でも、服のほころびは母に直してもらう始末だ。でも楽観的なところだけは受け継いだようで、最近は私たちに何ができるかを考えている。

 私は15年前から環境関連の記事を書いたり、自然保護の未来に関する本を出版したりしてきた。それでも、気候変動、野生の動植物の激減、環境問題がもたらす社会的な不平等など目の前に迫る課題の多さには、しばしば圧倒される。どれもスモッグより解決が難しいものばかりだ。

 一方で、希望のよりどころもある。ふくれ上がる人口を養い、全員にエネルギーを供給できるだけの知識と技術はすでにある。気候変動の流れを変え、動植物の絶滅を食い止める努力も始まっている。大衆は行動を求め、街に繰り出している。2019年9月には、世界中で600万人が「気候ストライキ」に参加した。1970年のアースデイと同じように、再び文化が音を立て、火花を散らして変わろうとしているのだ。人類は明るい50年後を迎えられると私は信じている。

 2070年は、2020年とも1970年とも違うだろう。やったことは帳消しにできないし、時間をさかのぼることもできない。環境も経済や社会も、変化は避けられない。なかには耐え難い変化もあるだろう。予測不可能な変化も起きるはずだ。生態系は変わり、種は進化する。

 私たちも変わる。地球に生息する多くの種の一つとして、人類をとらえ直すようになるだろう。その頃、20世紀後半から21世紀初めを振り返れば、苦しく激しい移行の時代だったとわかるだろう。人間同士、そしてほかの生き物とより良い関係を築き、その生態系のなかで繁栄していくことをこのとき学んだのだと気づくはずだ。

次ページ:変化は思ったより速く進むことがある

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