新型コロナ厳戒下の副作用? 動物フェイクニュースの拡散相次ぐ

ベネチアにイルカ、ゾウが酔いつぶれ? ホッとするニュースに潜むウソ

2020.03.24
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「いいね」の魔力

 ウェブ開発者で画像検証の専門家でもあるパウロ・オルドヴェザ氏は、自身のツイッターアカウント(@picpedant)において、広く拡散したツイートの嘘を暴き、投稿者への呼びかけを行っている。そうしたツイートから見えるのは「拡散への欲望」だという。それは「『いいね』や『リツイート』がぐんぐん増えるのを見たときの高揚感を、過剰摂取している状態なのです」

 たくさんの「いいね」やコメントをもらうことは「人に手っ取り早く社会的報酬を与えてくれる」と、米スタンフォード大学の社会心理学者で博士研究員のエリン・ヴォーゲル氏は言う。別の言い方をすれば、人をいい気分にさせてくれるということだ。研究からは、ソーシャルメディアへの投稿は、自尊心を一時的に高めてくれることがわかっている。

 いい気分にさせてくれるものを欲する気持ちは今、人々がパンデミックと闘う中で、以前よりも高まっているのかもしれない。「だれもが深い孤独を感じているときには、そうした気分にすがりたくなるものです。特に、人々に希望を与える内容を投稿することには魅力があります」。危機のさなか、動物や自然が元気を取り戻しているというストーリーは、「意味や目的といった感覚を与えてくれます。つまり、私たちがこうした状況に陥ったことには理由があったと思わせてくれるのです」

 そうした気分は、拡散したツイートの多くに共通している。「自然が人間をリセットするボタンを押したんだ」。ベネチアの運河にイルカがいるとして写真を投稿したツイートにはそうある。

実際には、イルカが泳いでいるのはベネチアの運河ではない。この動画が撮影されたのはサルデーニャ島だ。

「人々はおそらく、自然の回復力を心底信じたいのでしょう」。米オハイオ州ウースター大学の心理学と環境学の教授であるスーザン・クレイトン氏はそう語る。「人間は、自分たちがどれほどのことをしようとも、自然にはそれを乗り越えるだけの力があって欲しいと思っているのです」

 米ピュー研究所の新たな調査によると、米国人の約半数が、コロナウイルスに関連した偽のニュースや情報に触れたことがあるという。運河を泳ぐイルカについての他愛のないフェイクニュースは、相対的に言えばそれほど大きな問題にはならないかもしれないが、危機的な状況の中で偽の希望を広めることに、何かしら有害な影響がないとは言えない。

 そうした耳障りのいいフェイクニュースは、すでに気持ちが不安定になっている人々に、いっそうの不信感を抱かせる可能性があると、ヴォーゲル氏は言う。いいニュースが実は嘘だったと知ることは、「そもそもそれを耳にしなかった場合よりも、人々を大きく落胆させてしまうかもしれません」

 ソーシャルメディア上で伝えられる明るい話題は、これからの数週間から数カ月間、人々が家で自己隔離を行い、互いにコンピュータ画面を通じて交流しながら過ごす中、気力を保つうえで重要な役割を果たすことになるだろう。「皆さんにはぜひとも、前向きな気持ちになれる内容をシェアしてほしいと思います」と、ヴォーゲル氏は言う。「ただしそれは、ドラマチックなものである必要はありません。大切なのは真実であることです」

文=NATASHA DALY/訳=北村京子

おすすめ関連書籍

世界の陰謀論

世界史の裏でうごめく様々な陰謀説を、豊富なビジュアルを使って解説。各陰謀論を一躍有名にした決定的写真を多数収録!

定価:本体2,180円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加