人類が新型コロナを克服する日、「集団免疫」獲得の可能性は

英国は早々と撤退、だが流行が終息する状況の1つ

2020.03.25
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集団免疫を安全に獲得するには

 ワクチンは、体に一度も感染症と戦わせることなく、その病原体専用の武器を作ってくれる。そのため、一般的に集団免疫を目指す場合は、感染ではなくワクチンを使って行われる。例えば米国では、麻疹感染例のうち約30%は、けいれん、肺炎、脳炎等の合併症を引き起こし、1000人中2人が死亡に至る。全人口を麻疹にさらし、生存者に集団免疫を獲得させるというのは危険なやり方だ。

 しかし、感染によって集団免疫が獲得されることもないわけではない。悪名高い「水ぼうそうパーティー」は、大人よりも子どものほうが軽症で済むことの多い水ぼうそうに、一部の親が自分の子どもをあえて感染させようとする方法だ。(参考記事:「自閉症と予防接種にまつわる迷信」

「新型コロナウイルスの場合に問題なのは、年齢にかかわらず誰も感染したことがない点です」と、ゴスティック氏は話す。まるで水ぼうそうがこの世に初めて登場し、より重症となるリスクに大人がさらされているようなものだと、氏は説明する。

 また、集団免疫はどんな感染症に対しても有効なわけではない。例えば、破傷風ワクチンをどれだけの人数が接種しようと、接種していない人には関係がない。破傷風菌は環境中に生存するので、さびた釘を踏んでしまった非接種者は、やはり感染しうる。集団免疫が有効なのは、人から人へ感染する病気だけだ。

 そのうえ、免疫がそう長く持続するとは限らない。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)はあまりに変異が速く、1人の人の体内で進化することすらある。そう話すのは、フランス開発研究所(IRD)の感染症専門家、ジェシー・アバーテ氏だ。インフルエンザも変異が速く、免疫系やワクチンにとっては戦いにくい。だからインフルエンザワクチンは毎年、どの株が流行するかを予測して準備しなければならないのだと、氏は説明する。(参考記事:「MERSワクチン、開発が進まない理由」

新型コロナの集団免疫、本当に獲得できる?

 ゴーント氏によれば、今回の新型の他に、一般的なかぜ症状を引き起こす4種類のコロナウイルスが、すでに人類全体に広まっている。それでも毎年流行し続けるのは、これらのコロナウイルスに対する私たちの免疫が長く続かないからだ。もしも新型コロナウイルスがこれらに類似しているとすれば、集団免疫が維持されるには、人々がワクチン接種や感染を何度も繰り返さなければならない。

 回復後に新型コロナウイルスの検査を受け、再び陽性反応を示した人の中には、再感染したケースがあるとの報告もある。しかし、本当に再感染だったのかは不明だ。ウイルス排出が長期間続いており、排出量がその時々によって増減していた、という説明のほうが妥当である可能性が高い。

 回復してもすぐに再感染する可能性は、今のところ「ありえないと考えていい」とアバーテ氏も言う。もしもそこまで早く再感染することがありうるなら、世界の一部地域で急速に感染者数が減少している現状を説明できない。それに、これまでに知られているどんなウイルスにおいても、そんなことは起こっていないと、同氏は話す。

 また、有効なワクチンが開発されたとしても、接種によって免疫を獲得できない人が、必ずごく一部に存在する。そして、もし新型コロナウイルスへの免疫が長続きせず、何度もワクチンを接種しなければならないとしたら、実践上の課題はさらに大きくなるとグラッド氏は言う。

 今のところ、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ最適な方法は、社会的距離を保つことだ。だからこそ多くの医療関係者は、英国政府が早急に方針を変更したことに安堵した。

「徐々に集団免疫を獲得できるだろうと考えていました」と、インペリアル・カレッジ・ロンドンの感染症研究者アズラ・ガーニ氏は16日の記者会見で述べた。「しかし、それでは対処しきれないことがわかりました」

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文=CATHLEEN O'GRADY/訳=桜木敬子

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