人類が新型コロナを克服する日、「集団免疫」獲得の可能性は

英国は早々と撤退、だが流行が終息する状況の1つ

2020.03.25
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集団免疫とは何か

 ウイルスはひそかに感染する。変装して宿主の細胞に侵入し、免疫が反応するより早く活動を始める。細胞は、病原体がいることに気が付くと、免疫系に向けて警報を発する。しかし、ウイルスは一足先にスタートしているため、免疫系が追いつく前に増殖し、新しい宿主に感染することができる。

 細胞の中でウイルスへの免疫反応が開始されるには24時間程度かかると、英エディンバラ大学ロスリン研究所のウイルス学者エレノア・ゴーント氏は説明する。本格的な免疫反応が起きるまでには、さらに3日ほどかかることがある。そうすると、わずか8時間程度で自己複製できるインフルエンザのような呼吸器ウイルスは、だいぶ優勢だ。

 初めてかかる感染症で大変な思いをすることが多いのはそのためだ。だが、免疫系も2度目はそう簡単にだまされない。一度侵入者を退治したなら、その病原体専用の武器を用意しておき、再び現れた際に直ちに対応できるようにするからだ。だから、2度目にやってきたウイルスが、そこまで有利なスタートは切れない。

 免疫を持っている人は「感染を広げない不発弾」だと話すのは、インフルエンザに対する免疫を研究している米シカゴ大学のケイティー・ゴスティック氏だ。ウイルスが人から人に感染しなくなれば、流行は徐々に沈静化し終息すると氏は説明する。

「白か黒か」の集団免疫

 集団免疫が獲得されるには、集団の中で感染症の免疫を持つ人の割合が必ず一定のレベルを超える必要があると、米ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院の疫学者ヨナタン・グラッド氏は話す。少しばかり集団免疫が獲得されるということはない、つまり、白か黒かのどちらかしかない。

 1人の感染者が新たに感染させる人の数が平均1人未満になった時点で初めて、その集団は集団免疫を獲得したということになる。感染が全くなくなるわけではないが、拡大を防げるということだ。

 集団免疫に関する知見の多くは、感染力が非常に強い麻疹(はしか)から得られている。感染力が強いほど、集団免疫を達成するためには多くの免疫獲得者が必要になる。例えば麻疹の免疫を持たない集団に感染者が1人いる場合、18人もの人に感染が広がってしまう。この数を1人未満に下げるためには、集団のほとんどが免疫を獲得し、感染者と次の感染候補者との間で盾となる必要がある。麻疹の場合、集団免疫を達成するには95%もの人が免疫を獲得する必要がある。

 これまでの研究によると、新型コロナウイルスの感染力は麻疹よりも弱く、感染者が新たに感染させる人数は平均2〜3人とされている。この場合、集団免疫を達成できる免疫獲得者の割合は人口のおよそ60%だ。(参考記事:「新型コロナ、インフルやエボラと比べた危険度は」

次ページ:新型コロナの集団免疫は本当に獲得できる?

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