温暖化で光害が増す北極海、水深200mの生物も混乱

海洋生物に船舶の光が与える影響を調べた研究、生態系への影響は未知数

2020.03.10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ノルウェー、スバールバル諸島北、氷の海で研究船に乗る北極圏研究者たち。極夜の最中で、光はほとんど見えない。ボートが転覆した場合に備えてサバイバルスーツを着用し、ホッキョクグマに出くわした場合に備えてライフルを携行している。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL O. SNYDER)
[画像のクリックで拡大表示]

 真冬の北極圏では、太陽が地平線より上に昇ることはなく、夜が明けない日が続く。いわゆる極夜だ。

「常に夜勤で働いているような感じです」と英スコットランド海洋科学協会の海洋学者フィンロ・コッティエ氏は話す。

 2018年、コッティエ氏らの研究チームは真冬の北極圏を訪れ、極北の海に暮らす生きものに光が及ぼす影響を調べた。その結果、光害が海洋生物の生態系を大きく変えてしまう可能性が示され、3月5日付けの学術誌「Communications Biology」に論文が発表された。

 今回の結果が海洋生物にとって一体どんな意味があるのかは、まだわからない。だが、人と同じように、海洋生物は光を頼りに日々の生活を送っている。いつ餌を探す水深を変えるのか、いつ繁殖を行うのか、どこで狩りをするのか、光は様々な行動を決める指針となる。

「6月と7月は、海洋生物の成長や活動が爆発的に活発になります」と同氏は話す。「どうすればその謎を解明できるのでしょうか。この大増殖に向けて、極夜では何が起きているのでしょうか。私たちは、そのサイクルの全容を解明しようとしているのです」

 北極圏における気候変動対策には、そのサイクルを完全に理解することが極めて重要だ。氷が薄くなれば、より多くの光が暗い海に届くようになる。航行する船も多くなり、さらに光が増える。世界中で海水温が上昇するのに伴い、高緯度に追いやられる魚が出てきて、食物網を混乱させつつある。(参考記事:「北極は数十年で4℃上昇、温暖化は加速モードに」

次ページ:氷が減り、船舶が増える北極圏

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

2019年9月号

氷なき北極/北の果ての覇権争い/凍土に眠る炭素の脅威/消えた探検隊の謎/温暖化に注ぐ熱視線/オオカミと過ごした時間/氷が消える前に

2036年、北極海は初めて氷のない夏を迎える。氷の下に眠る資源や新航路をめぐって新たな対立が起きるのか? 永久凍土が解けるとどんな影響が起きるのか? 6本の特集とグラフィックで、北極の今を多角的にレポートします。

定価:本体1,028円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加