2020年2月27日、新型コロナウイルス感染者の急増に備え、正しい保護具の着用を実演するケイレン・スミス氏。米国のマサチューセッツ総合病院で。(PHOTOGRAPH BY ERIN CLARK, THE BOSTON GLOBE VIA GETTY IMAGES)
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 新型コロナウイルスの脅威から医療従事者を守るには、米国はできるだけ早く3億枚のマスクを確保する必要がある。ところが、現在国が緊急用に備蓄しているマスクの数は、その15%にも満たないことが明らかになった。

 2月下旬、米保険福祉省のアレックス・アザー長官は議会上院で証言し、戦略的国家備蓄に医療用マスクが3000万枚、N95マスクなどのレスピレーターが1200万枚しか備蓄されていないと、異例の発言を行った。N95レスピレーターは空気中の浮遊粒子を95%防ぐことのできる設計で、唯一顔の保護具としてCDCの認可を受けたマスクだ。

異例の発言

 通常、国家備蓄の内訳は安全保障を理由に公表されないことになっている。ナショナル ジオグラフィックがこの点について問い合わせると、戦略的国家備蓄の高官は、向こう18カ月間で5億枚のマスクとレスピレーターを購入する予定であると答えた。

 だが、今から生産を拡大しても十分とは言えず、すぐに手に入るというわけにはいかなそうだ。米疾病予防管理センター(CDC)による5年前の調査では、今回のCOVID-19のような重度の呼吸器感染症が米国で流行した場合、最悪のシナリオで長期的に70億枚のレスピレーターが必要であると予測されていた。当時、この調査結果はあまり注目されることはなかった。

 米国でも感染が拡大し始めた2月下旬、マスクやゴーグル、全身防護服、レスピレーターが世界的に不足するだろうとのCDCの懸念を受けて、各地で人々がマスクなどの買い占めに走った。

 世界保健機関(WHO)のテドロス・ゲブレイエスス事務局長は、3月3日にジュネーブのWHO本部で会見し、次のように語った。「個人用保護具の需要が急増し、買い占めが横行して世界的な供給の寸断が深刻化し、各国の対応能力が阻害されることを懸念します。医療用マスクの価格は6倍に、N95レスピレーターは3倍以上、防護服も2倍に跳ね上がっています」

 さらに、流行が急速に拡大すれば、医療スタッフが不足する危険性も明らかになってきた。(参考記事:「新型コロナウイルスに感染するとこうなる」

次ページ:必要な備蓄をシミュレーションすると…

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