失われた動物フィッシャーの再導入に成功、米ワシントン州

ヨーロッパ人がやってくる前の生態系を取り戻す取り組み

2020.03.09
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米国マウントレーニア国立公園で、カスケード山脈に1匹のフィッシャーが放される。(PHOTOGRAPH BY PAUL BANNICK, CONSERVATION NORTHWEST)
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 木箱の戸が開くと、ニフラーという名の立派なオスがするりと飛び出し、森へと姿を消した。続いてケンドラ、ネヴィル、ケイティ―も優雅に駆け抜けていった。

 森に放たれたのは、フィッシャー。カナダおよび米国原産の食肉目イタチ科に属する動物で、気性は激しく動きはしなやか、そして長い尾を持つ。20世紀初頭に毛皮のために捕獲されて個体数が激減し、米国ワシントン州ではいったん完全に消滅した。

 一度いなくなったフィッシャーを再び自然の中へ放つ「再導入」が、ワシントン州で開始されたのは2008年。ニフラーたち『ハリー・ポッター』シリーズにちなんで名付けられた4匹は、ワシントン州のノースカスケード国立公園に再導入される最後のフィッシャーとして、このほど放たれた。

 今回の再導入は一つの種の回復以上の意味がある。ヨーロッパ人がやってくる前にこの地域に生息していた食肉目の動物たちを、元に戻すことを意味するからだ。食肉目はネコ目とも呼ばれる哺乳類のグループで、ワシントン州にはアメリカグマやクズリ、オオヤマネコ、1990年代後半に自ら戻り始めたオオカミ、フィッシャー、そして数は少ないが手助けがあれば復活できそうなハイイログマなどがいる。

 自然保護活動家たちはこれを、失われた種を取り戻す、数十年にわたる努力の勝利として喜んでいる。これは、単に動物たち自身のために喜ばしいということではない。生物多様性が高ければ高いほど、その生態系の危機からの回復力は強くなるのだ。

リーマスと名付けられた若いオスのフィッシャーが、ノースカスケードの土地に足を踏み入れる前に運送用の箱から顔を覗かせる。(PHOTOGRAPH BY JASON I. RANSOM, NATIONAL PARK SERVICE)
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「私たちは現在、気候変動が生態系に及ぼし得る様々な影響と向き合っています。それは山火事の頻度であれ、木の実の成り具合であれ、野生動物の群集に大きく影響する可能性を持つあらゆることです」。そう話すのは、ノースカスケード国立公園の野生生物学者、ジェイソン・ランサム氏だ。「種の数が多ければ多いほど、生態系が無事に機能する可能性が高まります」

 ノースカスケード国立公園には、米国でも最大級の手つかずの生態系がある。ランサム氏が言うには、同じくワシントン州にあるマウントレーニア国立公園およびオリンピック国立公園と共に、大型食肉目が生きていくのに必要なスペースや資源、そして保護の仕組みが存在している。

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