近年、プラスチック問題に対する革新的な解決策がいくつも提案されているが、トム・ザキー氏の案は最も大胆なものの1つかもしれない。
早合点しないでほしい。彼は、プラスチックを落ち葉のように生分解する魔法の秘策を編み出したわけではないし、使い捨てプラスチックの新たな再利用法を発明したわけでもない。
ザキー氏が提案するのは、昔ながらの方法だ。つまり、返却と詰め替えができる容器を使うことである。このアイデアは、1920年代初期にコカ・コーラ社によって初めて導入された。同社は当時、コーラを高価なガラス瓶に入れて販売していたため、瓶を返却してもらう必要があったのだ。そこで、値段の約40%に相当する2セントのデポジット(預かり金)をとることで、瓶の約98%を回収し、40〜50回と再利用していた。デポジット制は、これまでに発明された容器の回収法の中で、最も効果的な方法の1つである。
使い捨てをやめ、詰め替えに回帰
ザキー氏は2019年5月、食料品から洗濯用洗剤まで多岐にわたる商品を、頑丈で再利用可能な容器に入れて販売するネット通販サービス「ループ」を立ち上げた。この事業の大胆な(そしてビジネスの観点でリスクを伴う)点は、それぞれ大きさも素材も異なる容器に入った300品目以上の商品を扱っていることだ。飲料瓶のように単一の容器のデポジット制とは大きくわけが違う。ループの代表的な商品は、つるりとしたステンレス製の断熱容器に入ったハーゲンダッツのアイスクリームだ。
ジーンズにパーカー姿で、もしゃもしゃ頭のザキー氏の風貌は、いかにもミレニアル世代の起業家らしい。現在38歳の彼は、17年前に米プリンストン大学を中退し、ごみビジネスのイノベーターになるため、大学のキャンパスから15kmほどの場所に「テラサイクル」という小さな廃棄物リサイクル会社を設立した。
彼は、おむつやタバコの吸い殻など、リサイクル不可能とされていた多くのもののリサイクル方法を考案した。だがそうするうちに、昔のような容器の循環を復活させ、使い捨て容器を一掃することに興味を持つようになった。
「ループの思想は、過去に学び、昔のモデルに回帰することです。例えばデオドラント製品を買っても、容器は借りるだけ。代金は中身の分だけ支払うのです」と彼は言う。(参考記事:「オーバーツーリズムに苦しむバリ島のプラごみ対策」)
広がる取り組み、大企業も新興企業も
プラスチックごみの削減に向けた本気の選択肢として、詰め替え可能な容器が再び注目されている。飲料業界では、返却できるボトルの利用が広がっている。だがもっと重要なのは、ループのように、詰め替えにはあまり適さないとされる商品において、新興企業や一部の世界的な大手企業が詰め替えに取り組もうとしていることだ。
スターバックスとマクドナルドは、再利用可能なカップでコーヒーを販売する「ネクストジェン・カップ・チャレンジ」という実験的なプログラムをカリフォルニア州で進めている。持ち帰り用の紙コップは通常、漏れ防止のために内側にプラスチックの薄膜が貼られており、リサイクルが難しい。プログラムがうまくいけば、そうした数十億個の紙コップを世界中からなくすことができるだろう。