ビクトリアの滝の崖の縁で、天然のプールに飛び込む男性たち。(PHOTOGRAPH BY ANNIE GRIFFITHS, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
ビクトリアの滝の崖の縁で、天然のプールに飛び込む男性たち。(PHOTOGRAPH BY ANNIE GRIFFITHS, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 アフリカにあるビクトリアの滝は、大きさでも荘厳さでも世界屈指の滝の1つだ。

 世界遺産にも登録されているこの滝は、およそ1.7キロにわたるザンベジ川の幅いっぱいに広がり、火山岩の台地のへりを勢いよく流れ落ちる。落差は100メートルを超え、霧状に立ちのぼるしぶきは約20キロ先からでも見えるほど。そのためこの滝は、現地で「モシ・オ・トゥニャ(雷鳴のとどろく水煙)」とも呼ばれている。

 ザンビアとジンバブエの国境にもなっているザンベジ川は、はるか昔からゆっくりと台地を削ってきた。ところが今、気候変動によって雨量が極端に変動し、滝の将来が脅かされている。

 ビクトリアの滝で問題となっているのが、乾燥と高温だ。周辺の地域では、年間雨量こそ毎年ほぼ同じだが、以前よりも短期間に集中して降るようになった。気温も上がっている。南アフリカの研究者、カイタノ・デュベ氏らによる2018年7月の論文で、10月の日ごとの最高気温の平均が1976年から2017年にかけて3.8℃上がったことが報告された。2019年、この一帯は過去100年で最悪の干ばつに見舞われ、12月には滝の水量が激減した。

 天候が極端になると、滝の堂々たる姿が損なわれるだけでなく、周囲の生態系と地域経済にも悪影響がある。英紙「ガーディアン」は2019年末、直近の干ばつが、ザンビアとジンバブエ両国で停電の原因になったと報じた。ビクトリアの滝の下流にあるカリバ・ダムの水力発電に頼っているためだ。

動画:世界遺産 ビクトリアの滝(解説は英語です)

滝の周辺で育まれる多くの命

 ビクトリアの滝の真正面には、まるで滝だけを取り去った鏡像のような断崖がある。この崖のほか、滝の周りに熱帯雨林のような生態系が保たれているのは、滝が作り出す霧のおかげだ。ここではマホガニー、イチジク、ヤシなど、さまざまな種の植物が生い茂る。

 国境となるザンベジ川を隔てた両岸は、ザンビアとジンバブエの両国がそれぞれ国立公園としている。その峡谷や崖は、ハヤブサやクロコシジロイヌワシなどの猛禽類にとって、非常に重要なすみかとなっている。

 人類もまた、この滝に長く頼ってきた。滝の近くではヒト族ホモ・ハビリスのものとされる石器が見つかっており、200万年前に初期人類がここに暮らしていた可能性をうかがわせる。より「最近」である、5万年前の人類が使った道具も見つかっている。

観光か、自然か、問われるバランス

 地元の経済成長を促すのに観光は欠かせない。近年は滝を見るために世界中から年間数十万人の観光客が訪れる。こうした需要に応えるため、ホテル、レストラン、キャンプ場といった観光ビジネスが盛況だ。

 ビクトリアの滝は自然の状態こそが美しいが、一帯の観光開発はとどまるところを知らない。次々と作られるリゾート、ホテル、さらには滝よりも下流にダムを設ける案まであり、実現すれば、国立公園内の峡谷はいくつか水に沈んでしまう可能性がある。ヘリコプターでの遊覧飛行からバンジージャンプまで、観光業者が滝周辺で提供するアクティビティは数え切れないが、誰にとっても素晴らしい旅となるよう滝を保全することが、今まさに課題となっている。

ギャラリー:世界遺産 ビクトリアの滝 写真7点(画像クリックでギャラリーへ)
ギャラリー:世界遺産 ビクトリアの滝 写真7点(画像クリックでギャラリーへ)
ザンベジ川の約2キロに及ぶ川幅が、そのままビクトリアの滝の幅だ。現地の呼び名「モシ・オ・トゥニャ」は「雷鳴のとどろく水煙」という意味で、滝から20キロ離れても見えるほどの豪快な水しぶきに由来する。(PHOTOGRAPH BY DIETMAR TEMPS, COLOGNE, GETTY IMAGES)

世界三大瀑布にも数えられるビクトリアの滝。今、その壮大な景色が気候変動により危機にさらされている。

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