南極半島には山脈が背骨のように走り、かつて南米のアンデス山脈とつながっていたと考えられている。ここでフェーン現象が起きたというのだ。気流が山を越え、下降する際に温度が上がる現象だ。
「フェーン現象の前例がないわけではありませんが、大気や海の温度が高いときに起これば高温の新記録が出やすくなります」と、デンマーク気象研究所(DMI)の気候科学者ルース・モトラム氏は話す。
それがまさに、今月初めに起こったのだろう。英国南極観測局のエラ・ギルバート氏が「とても極端」と形容するフェーン現象が、南極半島を覆った。周辺の研究施設で、それが数字となって現れた。2月6日、アルゼンチンのエスペランサ基地は18.3℃を観測。それまで、同基地では2015年3月の17.5℃が最高であり、南極大陸全体の観測史上最高記録でもあったが、それを塗り替える値が出た。
さらに2月9日、近くのシーモア島にあるブラジルの観測所は、いっそう極端な温度を記録した。いくつかの報道によると、20.75℃だという。検証が済めば、南極大陸だけでなく、南緯60度より南の範囲で20℃を超えた初の記録になる。
「南極で20.75℃」は公式記録になるか
ただし、これはまだあくまで仮の記録だ。世界気象機関(WMO)で、極端な気象や気候を追うランドル・サーベニー氏は今、委員会のメンバーと協力して今回の2つの高温測定値を精査し、WMOの公式記録とするための厳しい基準を満たすかどうかを判断するとしている。このハードルを越えるという保証はない。(参考記事:「南極に出現した真四角な氷山、どうやってできた?」)
「極端な記録を検証する場合、そのときのセンサー、地点、そして観測所についてのあらゆる情報を得る必要があります」とサーベニー氏は言う。「適切な高さだったか、較正されていたか、人が観測した場合、観測者は測定値を正しく読み取っていたか、地点は適切だったか。こうした点を全てチェックしなければなりません」
会員向け記事を春の登録キャンペーンで開放中です。会員登録(無料)で、最新記事などメールでお届けします。
おすすめ関連書籍
研究者が悩む99の素朴な疑問
研究によって限りなく真実に近いところまで解明されているものから、まったくわかっていないものまで、「物質と力」「宇宙」「人体」「地球」「生物の世界」「人類の営み」の6ジャンル、99個の研究テーマと解明のプロセスを紹介。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕
定価:1,760円(税込)