南極のように極端な環境では、ちょっとしたことで測定値がぶれることがよくある。その1つが、意外にも氷だ。晴れた日には白い表面が光を反射して、センサーの温度上昇につながる。2015年、ジェームズ・ロス島で17.9℃が観測され、南極大陸で記録された気温の最高記録を破るかと思われた。しかし、WMOは太陽による加熱効果を考慮して、測定値を17℃に下げる判断をした。
今回の記録は、WMOの検証をパスできるのだろうか。エスペランサ基地での2月6日の数字に関しては、サーベニー氏はほぼ間違いないとみている。観測所はWMOの公式観測網の1つであり、1950年代後半から観測を続けているため、その値は気象学者の間で高い信頼を得ている。「公式見解ではありませんが、私は新記録になると思います」とサーベニー氏。
一方、その数日後にシーモア島で測定された高温に関しては、氏はずっと懐疑的だ。この記録はWMOの恒久的な基地ではなく、ブラジルの永久凍土観測プロジェクトの一環で取られた。WMOはこの測定値を精査することになる。
重要なのは長期のトレンド
記録の更新は大きく報じられがちだが、南極を研究する科学者にとっては、長期的な傾向の方がはるかに大きな意味を持つ。南極半島の場合、全体的な方向は明らかだ。つまり、すべてが温暖化に向かっている。
南極大陸全体は、20世紀半ばからわずかに暖かくなっただけだ。しかし、南極半島のエスペランサ基地のように長期的に観測を続けている研究施設では、気温は1950年代から2000年代初めにかけておよそ3℃という急上昇を見せ、世界全体の平均をはるかに上回るペースで温暖化が進んでいる。(参考記事:「北極は数十年で4℃上昇、温暖化は加速モードに」)
気温が20℃近い日々がこの半島で続いたら、どうなるのだろうか。正確には誰もわからないが、もはやけっして突飛な問いではない。
モトラム氏は言う。「将来、極端な高温現象はもっと頻繁に起こると言って差し支えないでしょう」(参考記事:「南極の島を50年ぶり調査、ペンギンが半減の可能性」)