「最大の難所」を高速突破できたのはなぜか

<検証>疑惑の南極単独横断、冒険家に集まる批判 第4回

2020.03.02
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第1回から読む→「『世界初の快挙』、体験談は多くの矛盾を含んでいた」

マクマード南極点道路を走るスノーモービル。運転しているのは、米国南極プログラムのメンバー。(PHOTOGRAPH BY ELAINE HOOD, NATIONAL SCIENCE FOUNDATION)

 極地の記録に挑む多くの冒険家がそうであるように、オブレイディ氏もまた、無支援を貫くことに強いこだわりを持っていた。ルート上にあったALEの燃料補給所で簡易トイレを使うことさえ拒否していたほどだ。

 それなのに、なぜゴール前の590キロに差し掛かって、人工建造物であるマクマード南極点道路を利用したのだろうか。この道路は、海岸から南極点にあるアムンセン・スコット基地へ補給物資を運ぶために、2006年に米国立科学財団によって建設された。目印として、400メートルごとにオレンジ色の旗が付いた竹の棒が立てられている。(参考記事:「南極点に初めて立った男 アムンセン」

 この辺りには、南極大陸でも最も困難を極めるサスツルギ(積もった雪が風で削られて形成される浮き彫り模様。時には高さが1.8メートルに達することもあり、頂点は鋭く尖っている。サスツルギでは、スキーヤーの速度が著しく落ちる)が広がっているが、マクマード南極点道路は、そのサスツルギを160キロに渡って削り、平らにならして造られた。自転車で南極大陸横断に挑戦する場合、この道路を走行する。

 自身は人工の道路に助けられたにもかかわらず、凧を使って道なき道を踏破したオウスラン氏の功績を矮小化しようとするオブレイディ氏に、多くのベテラン冒険家から批判の声が上がった。

 著名な米国人登山家のコンラッド・アンカー氏はツイッターで、「トラクター道路をスキーで走行することは、私から見れば凧よりも大きな『支援』です」と書いている。

 アドベンチャー・スタッツにいたっては明確に「機械で整備された道を使うことは、支援を受けたとみなされます」としている。

 このルートを選択したことについてナショナル ジオグラフィックにコメントを求められたオブレイディ氏は、「実際に現地に行ったことのない人たちが安楽椅子に座って批判しているだけ」と反論した。

 しかし、冒険家のエリック・フィリップス氏は「スピードは2倍以上になり、危険を回避しながら進む必要もなくなります」と指摘する。フィリップス氏は、南極点までの新ルートを3本開拓し、ガイドの仕事をしながらマクマード南極点道路を渡ったことは何度もあるが、自分のルートにこの道路を含めたことはない。「道路をスキーで走行すれば、それは無支援とは言えません」

次ページ:危険を回避する必要があるのとないのとでは全く違う

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