マルハナバチが絶滅に向かっている、原因は高温

世界の農業を支える重要なハチ、衰退と気温の相関性を調査

2020.02.12
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 論文の共著者ジェレミー・カー氏によると、マルハナバチの減少にはいくつかのメカニズムが働いているという。研究室での実験で示されたように、マルハナバチには単純に高温による危険がある。一方で、植物や花が高温の影響を受けた結果、ハチの餌がなくなり飢える可能性もあると、同氏は付け加える。(参考記事:「ミツバチのウイルスは花粉を通じて拡散」

 マルハナバチは最長でも1年しか生きられず、多くの場合、女王バチは落ち葉の中や地中で冬を過ごす。だが、ここもやはり温度変化に弱く、氷が解けたり再凍結したりする影響を受けやすいと同氏は言う。

 花をつける植物にはマルハナバチの授粉を必要とするものが多いため、このハチの減少は環境にとっての危機でもあると、米国ミズーリ大学のマシュー・オースティン氏は話す。なお、同氏は今回の研究には関わっていない。

「マルハナバチが媒介する植物は、多様な生物に利用されているため、このハチが減ってしまうと生態系に連鎖的な影響が及ぶ可能性があります。結果として、生物多様性が失われるかもしれません」

 さらには、経済的にも影響が出る。ある試算によれば、マルハナバチを含むミツバチの仲間は作物を受粉させることで、米国経済に150億ドル(約1兆6400億円)を超える貢献をしているという。

減少の要因は気候変動だけではない

 マルハナバチの減少の要因は、気候変動だけではない。ネオニコチノイド(ネオニコチノイドは、すべてのミツバチに対して極めて毒性が高い)などの殺虫剤、原野の開発や農地への転換による生息地の破壊、病気のまん延、商業授粉用の外来種のミツバチの導入などの脅威にもさらされている。(参考記事:「ミツバチの病気、マルハナバチにも蔓延」

「今回の論文は、インパクトがあります。科学者たちは、気候がマルハナバチの減少に及ぼす影響に関して、より注目するようになるでしょう」と話すのは、米国ペンシルベニア州立大学の研究者ヘザー・ハインズ氏だ。なお、同氏は今回の研究には関わっていない。「ただ、論文は気候変動がマルハナバチ減少の大きな要因としていますが、それが全体の減少を説明する唯一の要因というわけではありません」

 論文の著者たちはこれに同意し、生息地の喪失が局所絶滅の一因であることも、今回の論文で示していると述べる。「生息地の喪失や殺虫剤の乱用が、減少の原因であることに異議を唱えているわけではありません。これらも強力な要因であると、私たちは考えています。ただ、今回の論文のテーマとは異なります」とカー氏は強調する。

「私たちが指摘しているのは、気候変動の影響を強く受けているということです」とカー氏は付け加える。「この気候変動の影響を無視すれば、絶滅のリスクを正確に理解することはできないでしょう」

「ストレス要因が1つだけであれば、ハチは対処できるかもしれません。ですが、ストレス要因がいくつも重なれば、限界点を超える恐れがあるのです」と、英国エクセター大学の生態学者マティアス・ベッカー氏は話す。

参考ギャラリー:世界の美しいハチ 写真9点(世界最大のハチも)(写真クリックでギャラリーページへ)
ヒメハナバチの1種、Andrena perplexaのオス。米メリーランド州で採集。(PHOTOGRAPH BY SAM DROEGE, USGS)

マルハナバチを助けるためにできること

 一方、良いニュースもある、とソロアイ氏は付け加える。

 今回の論文で、極端な気温がマルハナバチに影響を与えることが示されたのなら、都市環境に公園を増やし、木や低木を植えれば良い、と同氏は言う。多くの場合、周囲の建築物が立ち並ぶ空間よりも涼しくなり、マルハナバチが暑さをしのぐシェルターになるからだ。(参考記事:「マルハナバチはヒマラヤより高く飛べる」

 マルハナバチを助けるためにできることは、他にもある。

 最も簡単なものは、マルハナバチの餌となる在来種の花を植え、ネオニコチノイドなどの殺虫剤の使用を避けるなど、ミツバチに優しい庭づくりをすることだ。花壇に絶えず花が咲くようにすることや、主な隠れ家である落ち葉を掃除するのを春までは控えることも助けになると、オースティン氏は語る。

文=DOUGLAS MAIN/訳=牧野建志

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 動物の箱舟

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

世界の動物園・保護施設で飼育されている生物をすべて一人で撮影しようという壮大な挑戦!

定価:本体3,600円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加