カブトムシの密猟が南米で横行、過大な日本の需要

1匹30ドルの稼ぎ、ボリビアの大型カブトが次々に捕獲される理由

2020.02.06
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違法な業者を追えるか

 カブトムシの専門家であるフェルナンド・ゲッラ・セルード氏によると、日本のカブトムシ密輸業者が自らボリビアに入り、地元の業者を介さずにカブトムシを捕っていく例が増えているという。「今や彼らも経験を重ね、採集を助ける者たちと接触しているようです」

 コロイコのカブトムシハンター、レイナルド・サンブラナさんも同様の見方だ。中には、英語を話すツアーガイドを現地で雇い、カブトムシを捕る絶好の地点まで案内させる日本人がいると話す。

 コロイコで、私はあるツアーガイドに話を聞いた。彼は2018年、3人の日本人男性に雇われてサターンオオカブト探しを手伝ったという。摘発の恐れがあるため匿名にしてほしいとしたうえで、こう語る。「アラパタにテントを設置しました。カブトムシを3匹見つけました。彼らは今年(2019年)、同じ場所にまた来ると言っていました」

「ボリビアでは、カブトムシの密猟や取引で逮捕されることはまれです」と話すのは、ラパス林業・環境警察のワルテル・アンドラーデ警部だ。その理由の一つが、ペルー国境での監視の不足だと指摘した。このため、密輸品のカブトムシがいとも簡単に国外に持ち出される。「ペルーやボリビアの当局は、これほど長い国境線に対して最小限の管理しかできていません」とアンドラーデ氏。こういった穴だらけの国境線が、160キロ以上も延びている。

 2007年6月、ボリビアから日本にカブトムシ423匹を密輸しようとしたとして、日本国籍の人物がエクアドルの首都キトにあるマリスカル・スクレ国際空港で逮捕された。エクアドル共和国環境省の報告によると、押収されたうち、サターンオオカブト211匹が後にボリビアに返還された。

参考ギャラリー:「虫」の闇取引が巨大ビジネスになっている 写真10点(クリックでギャラリーページへ)
虫フェア出店者のボブ・ダフ氏は、様々な種の甲虫を売っていた。写真は、1体7ドルのモモブトオオルリハムシ。(PHOTOGRAPH BY KENDRICK BRINSON, NATIONAL GEOGRAPHIC)

取引の場はSNS

 アンドラーデ警部によると、昆虫の取引業者は、売買のほとんどをSNSを通じて行っている。「注文の約80%はインターネット経由です」と言い、SNSを介した違法販売を監視するシステムを自らの部署で始めたと話した。(参考記事:「郵便物からサソリ115匹、拡大する「虫」の闇取引」

 私は、カブトムシを南米ほか15カ国余りから仕入れているという「100 % Insect JAPAN」のフェイスブックページに連絡を取った。サイト管理者は、以前は飼育下で育ったカブトムシを販売していたと語った。これは合法だ。しかし今は、野生から捕獲された標本だけを販売していると明かした。だとすると、大部分は違法だ。

 匿名を希望したその男性は、東京の成田空港でコーヒーを共にすることに同意したが、待ち合わせに現われなかった。私は彼とフェイスブックで何度もやり取りし、最後にはブロックされた。しかし会話の中で、彼は「数カ国で自らカブトムシを採集し、スーツケースに入れて日本に持ち帰る」と漏らした。種によっては正しく書類をつけるが、「全部ではない」とも言った。

 やがて彼は、私がナショナル ジオグラフィックのジャーナリストだと自己紹介したことを忘れたのか、カブトムシを捕りに行く気はあるかと尋ねてきた。「可能なら、あなたとはボリビアで密かに会える。いつ行くかはまだわからないが、2020年の予定を組みたいと思っている」

 一方、レイナルド・サンブラナさんはカブトムシ採集をやめたと私に伝えてきた。彼や他の村人たちは、乏しい収入を補おうと採集をやっていた。「誰もがそうやって生活していましたから」とサンブラナさん。しかし今では、取引がカブトムシに害をなすことを心配している。「不正な業者たちは根こそぎ持って行き、あとに何も残らないように思えます。それで思いました。この違法な仕事はもうやるまいと」

お詫びと訂正:記事中、カブトムシ相撲で「チャンピオンのカブトムシが、これまでに数万ドルで売られた」とする記述を削除し、飯島和彦氏のコメントを修正しました。お詫びして訂正します。(編集部)

文=EDUARDO FRANCO BERTON/訳=高野夏美

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