カブトムシの密猟が南米で横行、過大な日本の需要

1匹30ドルの稼ぎ、ボリビアの大型カブトが次々に捕獲される理由

2020.02.06
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 専門家は、こうしたカブトムシ類の取引規模を不安視する。ボリビアにある生態学研究所と国立自然史博物館の昆虫学者、フェルナンド・ゲッラ・セルード氏は「昆虫の違法取引では、多額の資金が動きます」と指摘する。「ノミさえもインターネットで売ることができます。あらゆる種類の昆虫に値がつき、買い手がいます。大量に採集され続ければ、カブトムシはいなくなるでしょう」

 密猟と密輸だけでなく、農業のための森林伐採や焼畑で生息地が減るという大きな脅威もある。「農作物とコカの葉の栽培のため、森林が伐採されています」とゲッラ氏は話す。「耕作できない斜面にまでコカが植えられており、カブトムシの生息地が消えつつあります」

 さらにゲッラ氏は、カブトムシには熱帯林の栄養分をリサイクルする役割もあり、失われることの害は大きいと指摘した。幼虫は餌となる木を食べて分解し、腐敗を促す。しかもカブトムシは、腐敗した有機物を食べるために、地中に穴を掘って入っていくが、これが土壌の通気に役立っているという。

日本のカブトムシ熱

 ボリビアから地球を半周した日本の大阪で、私は鈴木ヤヨイ氏と話をした。夫と共に、ペットショップ「インセクトショップ グローバル」を経営している。「サターンオオカブトとヘラクレスオオカブトは、日本ですごく人気があります。日本の種より大きいので」と彼女は言う。

 毎年夏、東京の公園や緑地では子どもたちがカブトムシを捕る姿が見られる。ヘラクレスオオカブトを元にしたポケモンのキャラクターも生まれている。

カブトムシは、森の生態系を健康に保つ手助けをしている。ボリビアでは密猟に加え、森林伐採の影響もあり、カブトムシは生息地減少の危機にさらされている。写真はコスタリカのヘラクレスオオカブト。(PHOTOGRAPH BY PIOTR NASKRECKI)
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 日本には2種類のカブトムシ愛好家がいます、と鈴木氏は話した。カブトムシを育て、繁殖させるのが好きな人と、標本を集めるのが好きな人だ。鈴木夫妻は生きたカブトムシを扱っている。自分たちの店で繁殖・飼育したものもあれば、国内の別のブリーダーから幼虫を買って育てたものもある。

 店内を見て回ると、土で半分埋まった透明なプラスチック容器の中で、何かがもぞもぞと動いていた。黄色がかった虫だ。長さ10センチほど、ソーセージほどの太さで、体に細かい毛が生え、恐ろしげな顎がある。「サターンオオカブトの幼虫です」と、鈴木氏が笑顔で言った。容器の背面にタグが付いており、オスであること、店で繁殖されたことが記されていた。(参考記事:「【動画】世界最大のカブト、幼虫もソーセージ大」

活気を見せるカブトムシ相撲

 日本でのカブトムシ人気は、単にペットとして飼うだけに止まらない。「カブトムシ同士を戦わせる見世物があり、それが世界市場での需要を後押ししています」と、ペルー、フェデリコ・ビジャレアル国立大学生物学部の研究者、ホセ・ヤンナコーネ=オリベル氏とアレクサンデル・ソラス=ベガ氏は語る。

 野生のカブトムシは、交尾の季節になると優位をめぐって戦う。その際、角を武器に使い、他のオスを持ち上げたり、ひっくり返したり、空中に投げたりと、多彩な技を繰り出す。(参考記事:「オスの武器、戦い方で形状が決まる?」

 YouTubeには、来歴は不明だが種々のカブトムシが小さなリングで角突き合わせる様子を放送する日本のチャンネルがいくつもある。カブトムシが相手を裏返すか、リングから出せば勝敗が決まる。こうした動画が、何千人もの視聴者を集める。東京の昆虫店「むし社」の店長、飯島和彦氏が、このスポーツについて語ってくれた。「トーナメントが開かれることもあり、賞金が出る大会もあります」

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