すでに数千人が発症か、中国の新型肺炎、疫学者らが発表

注目の海鮮市場では野生動物を取引、SARSに極めて近いウイルス、今後の可能性は

2020.01.23
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閉鎖された海鮮市場に立つ、防護服姿の作業員。中国、武漢の海鮮市場は、新型コロナウイルス流行の発生地と考えられている。(DARLEY SHEN, REUTERS)
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 歴史は繰り返す。

 20年ほど前、中国南部の野生動物市場に、あるウイルスが現れた。それは、以前に知られていたどのウイルスとも異なっていた。2003年の冬、ウイルスに感染した患者は、発熱、悪寒、頭痛、痰が出ない乾いた咳を訴えた。いずれも風邪やインフルエンザの季節には珍しくない症状だ。

 しかしこの病は、肺にハチの巣状の穴を開け、患者の4分の1に重度の呼吸不全を起こす致命的な肺炎をもたらした。多くの感染症では、1人の感染者が新たに感染を広げる人数は3人までとされるが、一部の患者はいわゆる「スーパー・スプレッダー(感染拡大に拍車をかける人)」になり、数十人に感染を広げた者もいた。7カ月後に終息するまでに、重症急性呼吸器症候群(SARS)は32カ国に広がり、感染例8000件以上、およそ800人の死者を出した。

 このため、各国の当局者は今、中国中部の武漢市に出現した、SARSと同じくコロナウイルスの仲間である新型ウイルスに大きな懸念を抱いている。感染は、北京、上海、深センなどの主要都市だけでなく、わずか3週間で近隣の台湾、タイ、日本、韓国にも広がった。米国疾病予防管理センター(CDC)は21日、米国初の感染者がワシントン州で確認されたと報告した。

「人から人への感染拡大が確認されていますが、このウイルスがどれだけ容易に広がり、また感染力が持続するのかは分かっていません」。CDC国立予防接種・呼吸器疾患センター所長、ナンシー・メッソニエ氏は記者会見でこのように述べ、武漢のウイルスの迅速な検査方法を開発すると発表した。「現在、CDCでこのウイルスの試験を行っていますが、今後数週間で、結果を国内外の連携先と共有できるでしょう」

 ウイルスの感染者は22日までに500名を超え、17名の死者が報告されている。世界保健機関(WHO)は同日に緊急会議を開き、この大発生が、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に相当するかどうかを日本時間の23日午後8時からの会合で協議するとしている。

 英インペリアル・カレッジ・ロンドンの疫学者である今井奈津子氏らは、実際の発症例は数千に上るという推定を22日に発表した。CDCは17日、新型ウイルスの検査を米国の主要空港3カ所で始めると発表したが、米国最初の患者は、このチェックが始まる前に米国に入っていた。

次ページ:感染源は食用のネズミかアナグマか

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