超巨大ブラックホールの詳しい観測に成功、X線の道草を利用

物理法則ギリギリの速度で回転、X線が届く時間差による「反響マッピング」

2020.01.22
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
超大質量ブラックホールの周囲で渦を巻く分厚い降着円盤は、噴き出すX線の「エコー」を生み出す。この道草による時間差を利用して、望遠鏡で直接観察するよりもブラックホールの構造を詳しくマッピングできた。(ILLUSTRATION BY NASA/SWIFT/AURORE SIMONNET, SONOMA STATE UNIV.)

 昨年、ブラックホールを人類史上初めて直接撮影した画像が公開された。そのおかげでわれわれは、あの怪物の口のような穴の周辺には何があるのかを、目で見て確認できるようになった。そして今回、天文学者らは、X線の“エコー”を利用した技術を用いて、ブラックホールをさらに詳しく観測することに成功。その成果が1月20日付けの学術誌「Nature Astronomy」に発表された。(参考記事:「解説:ブラックホールの撮影成功、何がわかった?」

 観測対象となったブラックホールは、地球から約10億光年離れた「IRAS 13224-3809」と呼ばれる銀河の中心にある。この超大質量ブラックホールは、数百万℃のガスなどが回転する円盤に囲まれ、また中心からは10億℃を超えるX線コロナが噴き出している。このX線がどのように振る舞うかを描くことによって、科学者らは、ブラックホールの「事象の地平線(光さえ逃れることができない領域との境界)」周辺の、極めて詳細な地図を作成した。

「ブラックホールは光をまったく放出していないため、これを研究するには、物質がその中に落ちていくときに、どんな振る舞いをするかを観察するしかないのです」。論文の筆頭著者である英ケンブリッジ大学のウィリアム・アルストン氏はそう述べている。

 今回の観測結果は非常に正確だ。その精度は、昨年ブラックホールの写真を撮影した「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT:事象の地平線望遠鏡)」も到底かなわない。おかげで科学者らは、IRAS 13224-3809の中心にあるブラックホールの質量とスピンについて詳しく知ることができた。

 質量とスピンは、ブラックホールの進化を解き明かす重要な手がかりとなる。もし、付近にあまた存在する超大質量ブラックホールの一群を同じように観測できれば、銀河の成長についてより多くのことがわかるかもしれない。(参考記事:「一挙に50天体を比較、原始星の違いの謎に迫れるか」

【動画】ブラックホールの基礎知識
わたしたちが暮らす銀河の中心では超大質量ブラックホールが渦を巻いている。ブラックホールの種類、ブラックホールはどうやって形成されるのか、目に見えないブラックホールがどうやって発見されたのかなどについて知ろう。(解説は英語です)

次ページ:円盤にぶつかったX線が遅れて届く

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

宇宙の真実

地図でたどる時空の旅

宇宙の今が全部わかる!太陽系の惑星から宇宙の果て、さらに別の宇宙まで、どのような構造になっているのか、なぜそのような姿をしているのかを、わかりやすく図解で解き明かす。

定価:本体1,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加